上写真=土屋櫂大は敗退が決定するとピッチに座り込んでうなだれた(写真◎J.LEAGUE)
■2025年10月12日 ルヴァン杯準決勝第2戦(観衆:14,093人@三協F柏)
柏 4-1 川崎F
得点:(柏)垣田裕暉、仲間隼斗、細谷真大2
(川)脇坂泰斗
※1勝1敗、2試合合計5-4で柏が決勝進出
「勝たせられる選手ではまだない」
まただ。
逆転敗退を冷酷に告げるホイッスルが鳴ると、そのまま倒れ込んで力任せに腕でピッチをたたいた。土屋櫂大は自分の不甲斐なさが許せなかった。
「4月の自分のJリーグデビューのときも自分が入ってから失点してしまって、今日もまた自分が入って失点して負けてしまって、半年経っても同じことを繰り返してしまった。そこに悔いがありましたし、チームを勝たせられる選手ではまだないと痛感したので、そこは自分に対しての悔しさがあります」
そのデビュー戦とは、4月9日のJ1第5節、横浜F・マリノス戦。2-1 でリードしていた88分に登場したが、89分と90+2分に失点して逆転を許した。90+10分に高井幸大が決めて引き分けに持ち込んだものの、守備固めで投入されたDFとして失点は許されなかった。
そして、10月。川崎フロンターレが柏レイソルと戦ったルヴァンカップ準決勝は、8日にホームの第1戦に3-1で勝利を収め、迎えた12日の第2戦。先制しながら前半のうちに追いつかれたものの、まだリードは2点だから、ていねいに試合を進めればよかったはずだった。
ところが、細谷真大の抜け出しにぶつかっていったフィリップ・ウレモヴィッチが56分に一発退場。長谷部茂利監督の判断は早く、伊藤達哉とマルシーニョの看板ウイングを下げ、神橋良汰と土屋という若いDFを投入、右からファンウェルメスケルケン際、土屋、佐々木旭、神橋、田邉秀斗を並べる5バックに変更した。
「守り一辺倒ということではありませんでした」
長谷部監督はその意図を説明する。
「守り抜こう、ということではなくて、彼らの長所を消すために立ち位置を変えました。一人少ないので、どれだけ自分たちがボールにプレッシャーをかけてもはがされる可能性が高いので」
ボールの出どころより、潜り込んでくる場所を抑えておくようにポジショニングを整えた。
ピッチの中で話し合いの輪ができた。土屋が「伝令役」になっていた。
「1人退場して、自分たちが5-3-1のフォーメーションにしたんですけど、この5枚の並びと、中盤の3枚の並び、あとはセットプレーのところだったり、1人抜けて2人が代わって入ったところでずれたところのすり合わせをしっかりして、全員がしっかり頭を整理できるように、自分がベンチからそういうふうに指示を出すようにと言われたので、そこはしっかり味方に伝えるのと、あとは自分の中でもしっかり整理していました」
柏は流動的にポジションを入れ替えながら押し込んでくる。土屋は佐々木とファンウェルメスケルケン際の間に立って、嫌な場所をしつこく狙ってくる選手の進入に備えた。
「シャドーの選手がニアゾーンにランニングしてくるのを見たり、中盤の選手を押し出すこと、逆サイドに振られたときは自分が細谷(真大)選手を見るようにしっかりスライドしながら、右の際くんをしっかりスライドさせるのが自分の今日のタスクだったので、そこは意識してやっていました」
頭の中はクリアだった。だが、73分、77分、90+2分と次々にゴールを許し、2試合合計で4-5という悲劇的な逆転負けを喫した。
「今日、勝てなかったことがすごく悔しいですし、自分が出て、勝つことで自分の評価を上げることができたと思っています。でも、勝てなかった以上、自分ももっと成長しなきゃいけないですし、4月のリーグ戦からまったく変わっていないとまた思いました。この半年間、自分の中ではしっかりやってきたつもりでしたけど、詰めが甘かったと思います」
土屋にとってはまさにプロの洗礼。4月と10月の教訓が、19歳のルーキーDFをどこまで大きくしていくだろうか。