JリーグYBCルヴァンカップでアルビレックス新潟がクラブ史上初の決勝進出を成し遂げた。10月13日の準決勝第2戦で2-0で勝って連勝とし、目標とする「てっぺん」へあと一つと迫っている。リーグ戦では今季最長の4連敗を喫する中でV字回復を果たした陰に、星雄次の存在がある。

上写真=サポーターと喜びを分かち合う選手たち。星雄次(19)も充実の表情だ(写真◎J.LEAGUE)

■2024年10月13日 ルヴァンカップ準決勝第2戦(@U等々力/観衆21,159人)
川崎F 0-2 新潟
得点:(新)小見洋太、太田修介

「想定内だったというか」

 J1で泥沼の4連敗。そこから、ルヴァンカップ準決勝では2試合とも完勝と言える内容でクラブ初の決勝進出。この間に何があったかと言えば、一つには星雄次の復活だ。

「ケガが治ってからもなかなかチャンスを与えることができず、僕自身もいろいろ考えた中で起用を決断しました、それが結果につながったのが非常にうれしい」

 松橋力蔵監督は今季最長となる4連敗の苦境を断ち切る方法に思いを巡らせ、星をピッチに送り込む決断を下した。

 5月に右腓骨骨折の重傷を負い、戦列を離れた。本人が「ちょっといままでにないぐらいの離脱だった」と戸惑いもあったが、川崎フロンターレに1-5で敗れたJ1第32節で途中出場して4カ月ぶりに復帰を果たすと、ルヴァンカップ準決勝はどちらもボランチとして先発出場を果たし、勝利のキーファクターになった。

「4連敗してる状況での準決勝だったんで、どうにか流れを変えたいというか、チーム状況を変えたいという一心で戦いました」

 受け身になっていたチームが、星がプレーした2試合では見違えるように推進力を取り戻した。

「正直、もっと前半から自分たちのリズムでプレーしたいところはありましたけど、カウンターに出たときには、自分たちの攻撃を完結させられるような場面もいくつかありました。行ける場面があるのであれば、前の選手は行くという判断ができたことは良かったですね」

 第2戦を終えてそんなふうに話したが、アタッカー陣を後ろから押し出すような役割を果たしたのが、星である。この人ほど、周りが生きるようにと気が利くプレーを優先する選手も少ないのではないか。

 ボールを引き出す場所やタイミングの素晴らしさ、受けてからの判断の的確さやボールの扱い方のていねいさはチームでも随一。さらには、理論的にこの条件を満たしているから気が利いている、と定義できない種類の細やかさというか優しさが、その立ち位置やボールタッチに表れている。

 その賢さを、第2戦にボランチでコンビを組んだ宮本英治と共有して中盤を制した。

「相手の選手はやっぱりライン間のプレーに長けているので、まずは危険なエリアで自由にさせないことは2人で意識してプレーをしようと話していました」

 そこで発揮したのが、泥臭さだ。途切れることのないバトルに挑み続けた集中力は高かった。

「欲を言えば僕たちがボールを持ちたかったですけど、ああいう激しい展開は自分の中では想定内だったというか、あり得るなと思ってたんで」

 身長170センチと小柄な体を巧みに当てて相手を吹き飛ばすシーンもあって「でも、やられる場面もあったんで」と苦笑いだったが、うまいだけの選手ではないことを大舞台で示してみせた。

 リーグ戦ではこの等々力で1-5と敗れていて、松橋力蔵監督は借りを返そうと、食らった失点を上回る6ゴール以上を奪い取るんだと話して選手を焚き付けてきた。第1戦では星自身のミドルシュートによるゴールを含む4得点、第2戦は31分に小見洋太が先制してから、川崎Fの猛攻をつぶし続けて、最後に89分には太田修介が追加点。本当に6ゴールをたたき込んだ。

「試合前にリキさん(松橋監督)から、1試合目で勝ったけれど、まだ2点足りないぞ、という話がありました。それで最後にもう1点取れたことで、みんなの喜びを爆発させることができてよかったなと」

 バランスを失わず、いるべきところにいて、川崎Fにゴールを許さず、攻撃陣を迷わず走らせた。喜び爆発のミッションコンプリートの陰には、星のきらめく存在があった。