アルビレックス新潟が今年の合言葉「てっぺん」へまた一歩近づいた。9月8日のJリーグYBCルヴァンカップ、プライムラウンドの準々決勝を突破して、9年ぶりのベスト4進出を決めた。立役者はなんといっても長倉幹樹。第1戦の4ゴールで強烈な自信を身につけて、あえて優勝を意識して戦っていく。

上写真=長倉幹樹こそ準決勝進出の立役者だ(写真は第1戦から◎J.LEAGUE)

■2024年9月8日 ルヴァンカップ準々決勝第2戦(@Gスタ/観衆6,726人)
町田 2-0 新潟
得点:(町)中島裕希、下田北斗
※1勝1敗、新潟が5得点2失点で得失点差で上回り準決勝進出

「最低限、良かったな」

 第1戦で4ゴールを挙げてヒーローになった長倉幹樹は、この日も「予感」があった。

 7分、右からのダニーロ・ゴメスのセンタリングに右足を合わせたが、ゴール左へ。

 11分には左からGKと1対1のシーンを迎え、股下を狙ったというが、ストップされた。

 35分にも左からの折り返しを受けて落ち着いて切り返して相手を倒し、左足で狙ったもののGKにはじき出された。

 90+5分にも左から小野裕二のスルーパスで抜け出して、右に持ち出してニアを狙うリズミカルなシュートで狙ったが、わずかに左。

 というわけで、この日は「予感止まり」になってしまい、長倉も「はい、残念でした」と漏らす。

「自分が決めるところで決めていれば、もう流れはこっちのものだったと思うんです。決めきれなかったところが負けた原因だと思います」

 0-2で敗れたが、それでも9年ぶりのベスト4は長倉の活躍に負うところが大きい、というのは誰もが認めるところ。「勝って突破したかったですけど結果的には突破できたので、最低限、良かったなと思います」と小さく笑った。

 試合が終わるまで運動量もスピードも衰えないのは、驚きの能力。「みんな走ってますよ。それに、僕は走ることぐらいしかできないですから」と謙遜するのだが、ただ走れるだけでこれだけ多くのチャンスや得点を記録することはできない。それに、走行距離やスプリントの数が多ければ多いほうがいいのだろうが、それ以上に、勝利に貪欲だからこそ最後まで走るという「生き様」を新潟のサポーターは敏感に感じ取っている。

 これでJ1リーグとルヴァンカップで8試合連続先発出場で、2試合だけ途中で退いたが、あとは最後まで走りきった。前線でビルドアップのポイントになり、タメを作り、裏抜けし、チャンスボールを届け、フィニッシュも積極的と、オールラウンドな能力はいまや新潟のサッカーに欠かせない。

「そんなには変わったとは思ってないんですけど、チームのサッカーに自分が合わせて長所を出せるようになってきたのかな。周りのおかげでもあります」

 新しい服が体になじむように、新潟のスタイルと自らがお互いに適応して同化していく感覚だ。

「工夫というか、コミュニケーションでタイミングだったりを要求していく感じですね」

 自らの活躍でベスト4に押し上げたことへの満足と、だからこそへの渇望が動き出す。

「もうベスト4で、あと2つでてっぺんなので、意識してそこを目指して頑張っていきたいです」

 有言実行の男に期待が集まらないわけはない。