キャプテンは涙をこらえていた。11月4日、JリーグYBCルヴァンカップ決勝でアビスパ福岡が浦和レッズを振り切って2-1で勝利、クラブ史上初めてとなるタイトルを獲得した。キャプテンの奈良竜樹は3バックの中央に立って、浦和の総攻撃をはじき返した。
上写真＝奈良竜樹がキャプテンとして、念願の優勝トロフィーを高々と掲げた（写真◎J.LEAGUE）
■2023年11月4日 JリーグYBCルヴァンカップ決勝（＠国立競技場/観衆61,683人）
福岡 2-1 浦和
得点：（福）前寛之、宮大樹
（浦）明本考浩
「いままで頑張ってきてよかった」
アビスパ福岡というチームはもしかしたら、キャプテンの奈良竜樹の歓喜の言葉でその多くを表現できるかもしれない。
「上手でもなくて華麗でもないけれど、全員が最後の最後まで体を張って戦って、アビスパらしい戦いで優勝できてうれしいです」
とはいえ、先制ゴールは華麗だった。5分に右サイドを紺野和也が突破して折り返し、逆サイドで前寛之が押し込む鮮やかなコンビネーションから生まれた。追加点は45＋4分。CKの流れから、またも紺野が今度は左サイドを縦に突破してマイナスへ、宮大樹が左足で蹴り込んだ。
58分には山岸祐也のPKがGK西川周作に止められ、67分に明本考浩に1点を返された。ここからは浦和が猛攻に次ぐ猛攻を仕掛けてきた。だが、3バックの中央にそびえ立った奈良を中心に、まさしく体を張って冷徹にはじき返して、アディショナルタイム8分を迎えたところでついに歓喜の瞬間を迎えた。
「仲間に恵まれてサポーターの皆さんに恵まれて、こうやってみんなで喜べる瞬間を味わえることができて、いままで頑張ってきてよかったと思います」
涙をこらえながら、すべての人に感謝した。奈良自身は北海道コンサドーレ札幌、FC東京、川崎フロンターレ、鹿島アントラーズと多くのクラブを渡り歩いた苦労人。キャプテンとしてチームの戦闘を走る1年だった。
そして仲間の中心に立って、両手で抱えたトロフィーを高々と掲げたときには、もう涙はなく、清々しく誇らしい笑顔だった。