2月16日、JリーグYBCルヴァンカップ、グループステージ第1節が行なわれ、清水エスパルスは川崎フロンターレに1-5で敗れた。だが、新スタイルの習得を目指す清水の選手たちは手応えも感じていた。金子翔太に話を聞いた。

上写真=右ウイングで先発フル出場した金子翔太(写真◎J.LEAGUE)

石毛くんのゴールが象徴的

 クラモフスキー監督が標榜するスタイルは、現在の横浜F・マリノスに近い。ひとつ特徴的なのは、ビルドアップの際にサイドバックは持ち場を離れて、中央に進出する点。時にはボランチのみならずトップ下の位置にまで進出し、攻撃に積極的に絡んでいく。

 アタッキングエリアで数的優位を作りやすい反面、ボールを失えば一気にピンチに陥る。実際、川崎フロンターレ戦でも、たびたびピンチを招き、失点することにもなった。

 結局、1-5で敗戦。清水はトライして、そしてエラーした。ただ、そのエラーは意味のあるものだと選手は振り返る。3トップの右ウイングとして先発した金子翔太がゲーム内容についての率直な感想を語った。

「川崎はまずベースがあって、変わらないスタイルをここ3、4年やっている。僕らも自信を持ってやっていこうと話していましたけど、いざ、試合になってみると川崎の勢いに圧倒された。本来、攻撃的なポジショニングを取るところで、怠っていたというか、みんながボール受けたがらないという現象が起きてしまって、開始20分ぐらいはサンドバック状態になった。ハーフタイムに監督から喝が入って、『自信を持て』という言葉があって、後半はある程度、自信を持ってやれた部分もありましたけど、僕らの成熟度は2、3割というところ。練習をするごとに、試合をやるごとに良くなっていくとは思いますが、4週間あまりでは、完成度はこのぐらいなんだなと」

 攻撃の局面で前線に人数を増やし、パスコースを作って、ボールを相手ゴールへと近づけていく。位置取りと走力とが重要な戦術を採り入れて、まだひと月。そう簡単に習得できないことは金子も、チームメイトも知っている。

 ただ、この試合に何も得るものがなかったかと言えば、そんなことはない。

「後半は、時間帯によってはいくつか目指していた形、ビルドアップからゴール前へというシーンを出せました。数は少なかったですけど、狙っている形が出た。
 もちろんリスクあるポジショニングを取っていて、そのままいけば前には行けるんですけど、ボールを失ったときに、どうしてもサイドバックが中で高い位置を取っているのでピンチになる。まず失わないというのがベースですけど、前半はとくにパスコースが隠れていて、手前のビルドアップで引っ掛かっていた。全員がボールをもらう位置をしっかり取れれば、(現段階でも)ビルドアップのときに、もう少し優位になったと思う」

 狙いをしっかり形にしていくには、やはり練習と試合を重ねていくしかないが、その先には、昨年よりもいい結果を出せるというポジティブな感覚があると金子は言った。

「去年は正直に言うと、ドウグラス(現神戸)に頼っていた部分がかなり多かった。4-4-2をベースにしっかり守って、ドウグラスを基点にするという、個人の力量に頼っていた部分がありました。でも今日は個人で打開するということではなくて、グループで打開しようと試みた。形は少ししか出せなかったですけど、後半はパスをつなげていたと思います。自分たちの狙いを少しですけど、出せました。石毛(秀樹)くんのゴールが象徴していると思う。左サイドバックの選手が、右のクロスでニアで(ヘディングでゴールを)入れるというのは、今年を象徴する形。もちろん、スコアは1-5ですし、サポーターの皆さんに勝利を届けられなかったので悔しいですけど、次の東京戦に向けて、いい教訓にしたい」

 攻撃時に中央に進出していくサイドバックのタスクをこなし、得点を挙げた石毛も、そして右サイドバックとして先発した奥井諒も、新しいスタイルにやり甲斐を感じていた。習得にはまだ時間はかかるとしながらも、金子と同じくポジティブな感想を口にしている。

「新しい形にトライしているので。練習と試合を重ねことで100パーセントに持っていけるように。今は我慢の時期かなと思っています」(金子)

 クラモフスキー新監督の下で新たな道に歩き出した清水エスパルス。公式戦の初戦は大敗に終わったが、金子も、ほかの選手たちも、同じ未来図を描いている。昨季までとは違う、ポジティブな未来図を。