90分間で2-2、延長戦でも両者1点ずつ奪い合い、決着はPK戦に委ねられる。ここで川崎Fの守護神・新井章太が、札幌の2本のキックをストップ。PK戦にもつれる激闘を制した川崎Fが、ルヴァンカップ初優勝を達成した。

上写真=大会初優勝を果たした川崎Fの小林主将(写真◎近藤俊哉)

■2019年10月26日 JリーグYBCルヴァンカップ決勝
札幌 3-3(PK4-5) 川崎F
得点者:(札)菅大輝、深井一希、福森晃斗 (川)阿部浩之、小林悠2

小林が語る“敗北”の意味。「悔しさが人を強くする」

 聖杯は、ついに川崎Fの手に渡った。これまでに4度(2000年、2007年、2009年、2017年)、決勝の舞台で涙を呑んできたが、5度目の挑戦でPK戦の末、歓喜の瞬間が訪れた。

「今のチームには“強い”選手が多いなと感じます。(新井)章太、(大島)僚太も強いし、メンバーチェンジした阿部(浩之)ちゃんは、ずっと声をかけてくれていました。サブの選手も全員がすごく信じてくれて、(ピッチ上の)自分たちに力を与えてくれた。『もうやるしかないだろ』という状況でした。心強い味方がたくさんいる中でキャプテンをやらせてもらっていて、すごく良いチームだなと感じましたね」

 左腕にキャプテンマークを巻いた小林悠が、仲間と共に上った埼玉スタジアムの表彰台で、ルヴァンカップを高々と掲げた。

 この上ない喜びが、川崎Fの戦士たちにあふれる。ただ、その中で小林には喜びとは別に、ある感情が湧いてきた。

「なんだろう……。(川崎Fも)悔しい経験をしているぶん、勝ったときも、負けたチームのことをちょっと考えてしまいましたね。自分たちもこうだったなと。うれしい気持ちもあるけれど、その反面、なんか複雑な思いもちょっとありましたね」

 最近で言えば2年前、表彰台で歓喜に沸くC大阪の選手たちをピッチから見つめた。それだけに、小林自身は今回の札幌の面々の心情を感じ取らずにはいられなかった。

「ク・ソンユン選手は倒れ込んで悔しがっていた。やっぱり、悔しい負けですよね。あの状況で負ける。今日の展開としては、札幌が勝っても全くおかしくない試合でした。だからこそ、やはり悔しさは大きいと思う……」

 川崎Fは2017年、2018年と2度のリーグ制覇を果たし、今回もルヴァンカップの栄光を勝ち取った。ただ、頂点にたどり着くまでに味わった悔しさははかり知れない。それを糧に成長してきた小林だからこそ、紡げる言葉がある。

「こういう悔しさが人を強くすると思います。自分たちも、そうやって強くなってきましたから。札幌は良い監督がいて、良いサッカーをしている。すごく良いチームなので、お互いにまた成長していければいいなと思いますね」

 勝者がいれば、敗者も存在する。スポーツの世界では、当然のことだ。そのコントラストが如実に現れた埼玉スタジアムで聖杯を掲げた小林は、そのように敗北の意味を口にした。

取材・文◎小林康幸

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