上写真=最終ラインの背後をカバーするGK飯倉
写真◎Getty Images

 横浜FMは序盤から湘南の圧力を受け、流れが変わらぬままに36分に先制を許す。攻勢に転じた後半、11本のシュートを放つもゴールネットを揺らせず。2001年以来のリーグカップ制覇はならなかった。

「今のサッカーで、勝たなかったら意味がない」

 決勝でも、自分たちのサッカーを徹底的に貫いた。その結果の失点と、敗戦だった。

 ゴールキックでも長いボールを蹴り出すことはなく、最終ラインから細かくつなぐ。そのプレーが湘南の標的になり、マンツーマンではめるようなプレスにあえいだ。特に左サイドからのつなぎでボールをカットされ、34分にはボックス左のクロスから決定的なヘディングシュートを放たれた。その2分後の失点も、左サイドでボールを奪われたシーンから始まった。その後、挽回はできなかった。

「はめられて、前に進むことができなかった。もう少し、簡単に前に行っても良かったかなとも思う」。前半の組み立てに苦労した左サイドバックの山中亮輔は、そう振り返った。

 一時は降格圏に足が浸かりかけたリーグ戦も、終盤に入り調子を上げつつあった。標榜する攻撃的なサッカーが、実を結びつつあるかに見えていた。だが、「今のサッカーが、見ている人にとって楽しかったり、良い評価につながっているかもしれないけど、勝たなかったら意味がない」。豪快なロングシュートでの決勝点を許し、悔しさは人一倍であろうGK飯倉大樹は、そう言い切った。

 湘南のプレスをかわしてボールを前に運び、サイドチェンジも交えてチャンスにつなげる場面もあった。最終的にシュート数は15本対12本と逆転したが、スコアにはつながらなかった。

 今年1月1日の天皇杯に続き、カップ戦の決勝で泣いた。「今年の元日も悔し涙をのんだのに、その教訓が生かされていない。同じことを繰り返して、情けないというか。技術云々ではなく、優勝するという強い思いや姿勢を、笛が鳴った瞬間からもっと表現すべきだった」。天野純は声を落とした。

 ビルドアップで、乾燥した芝に苦しんだかもしれない。精神的に、受け身になってしまったかもしれない。だが、ここで行く道を信じられなくなったら、この日の悔しさも無駄になる。

「自分たちのサッカーが決勝で、特に前半にできなかったこと。それがすべてだったと思う。オレたちのサッカーはまだ完成形じゃないということ」。そう話した飯倉は「来年、このサッカーでタイトルを取るという意味で、もっと成長しないといけない」と、視線を揺るがすことなく語った。

取材◎杉山孝