ガイナーレ鳥取の金鍾成監督が、かつての仲間との初対決を心待ちにしている。次節のホームゲーム、Jリーグ30周年記念マッチで対戦する中山雅史監督は、現役時代のチームメイト。28年の時を経て、それぞれのチームを率いる指揮官として勝利を目指す。

上写真=鳥取の監督に就任して3年目を迎えている金鍾成監督。中山監督との初対決に臨む(写真◎石倉利英)

「ジュビロの礎を築いた彼らと対戦できる」

 鳥取は5月3日の明治安田生命J3リーグ第9節で、FC琉球に3-2で勝ち、リーグ戦7試合ぶりの勝利を挙げた。開幕2連勝の後は4分け2敗と失速していただけに待望の勝利で、指揮官も「ボールを奪ってゴールに向かう、いかにゴール前にボールを供給して得点に結びつけるかという、やろうとしているプレーで点を取れたのがよかった」と評価している。

 次節はホームゲームで、5月14日にアスルクラロ沼津と対戦する。米子市の練習拠点・オールガイナーレYAJINスタジアムでの今季初試合で、Jリーグ30周年記念マッチでもある一戦は、現役時代にジュビロ磐田でチームメイトだった中山雅史監督との初対決でもある。

 現役時代の金鍾成監督(選手としてのJリーグ登録名は『キム・ジョンソン』)は、在日朝鮮蹴球団で長くプレーしたのち、1995年に磐田に加入。ハンス・オフト監督が率いるチームで活躍を目指したが、リーグ戦出場は2試合に終わった。翌年はJFLのコンサドーレ札幌に移籍したため、Jリーグでプレーしたのは1年のみ。「Jリーグは厳しいところだということに慣れる前に終わってしまったので、選手としては残念だった」と振り返るプロ生活だった。

 一方、FWのポジションを争った中山は同年のリーグ戦で、45試合に出場して18得点。負傷に苦しんだ94年の12試合3得点から大きく上積みし、リーグを代表するストライカーとしての地位を確立したシーズンとなった。

 3歳年下の中山監督の現役時代を、金鍾成監督は「魂のストライカー」と表現した。「クロスが10本上がってきたら、10本全力で飛び込んでいける。全力でやれと言うが、簡単なことではない。すべてにおいて全力でプレーできる選手だった」と語り、「もちろんゴール前に入っていく鋭さ、ヘディングのテクニックもあった」と振り返る。

 沼津では、中山監督と同じく今季就任した鈴木秀人ヘッドコーチも、磐田時代のチームメイトだ。94年に加入し、金鍾成監督がプレーした95年にJリーグデビュー。そこから長年にわたって堅守を支えるDFとして活躍し、2009年限りで現役を引退するまで磐田一筋でプレーした。

「ゴンと秀人がいる。僕は試合に出られなかったですが、レギュラーを張ってジュビロの礎を築いた彼らと対戦できる。楽しみです」と指揮官。Jリーグ草創期から28年の時を経て、指導者として新たなステージで向かい合うことになる。

取材・写真◎石倉利英