4月29日の明治安田生命J3リーグ第8節で、ガイナーレ鳥取と奈良クラブが対戦した。前半唯一のシュートで先制した奈良が、後半に2本目のシュートで2本目。その後に相手が10人になってから劣勢を強いられたものの、守備陣がしっかり対応して完封勝利を収め、3連勝で暫定2位に浮上している。

上写真=前半に先制点を決めた浅川(中央右)をチームメイトが祝福。奈良はシュート3本で2得点を奪って連勝を伸ばした(写真◎石倉利英)

■2023年4月29日 J3リーグ第8節(@Axis:観衆1,661人)
鳥取 0-2 奈良
 得点:(奈)浅川隼人2

・鳥取メンバー◎GK糸原紘史郎、DF田中恵太、増谷幸祐、鈴木順也、文仁柱、MF普光院誠、牛之濵拓、世瀬啓人、東條敦輝(69分:長谷川アーリアジャスール)、小澤秀充(81分:馬場琢未)、FW澤上竜二(57分:富樫佑太)

・奈良メンバー◎GK岡田慎司、DF寺村浩平、伊勢渉、鈴木大誠、加藤徹也(59分:寺島はるひ)、MF堀内颯人(HT:片岡爽)、可児壮隆、山本宗太朗(HT:中島賢星)、FW浅川隼人、酒井達磨(88分:都並優太)、嫁阪翔太(75分:西田恵)

「皆さんは想定していなかったと思います」

 この日の鳥取市上空は朝から雲が広がり、時折小雨がぱらつく不安定な天候。気温が公式記録で20・9度まで上がったために蒸し暑く、強い風も吹き荒れる難しいコンディション下での一戦となった。

 立ち上がりは今季ホーム初勝利を目指す鳥取が、アグレッシブな攻撃でゴールに迫る。5分にMF小澤が左サイドから放ったシュートはわずかに右に外れ、12分のMF普光院の左足シュートは奈良GK岡田に阻まれたが、風下ながら良い試合への入りを見せていた。

 だが17分、奈良が最初のシュートで先制点を奪う。攻め込んだ後の鳥取のクリアを拾って2次攻撃を仕掛けると、戻って対応した鳥取MF東條の触ったボールがエリア内へ。FW浅川がダイレクトで右足を振り抜くと、ニアサイドを突いたシュートを鳥取GK糸原がキャッチできず、そのままネットを揺らした。

 公式記録では前半唯一のシュートで先制した奈良は、ハーフタイムに2人を交代。対して鳥取は風上に立ち、前半同様に立ち上がりから意欲的に攻め込んだ。後半開始直後の46分には、DF田中の右からのセンタリングをFW澤上がヘッドで合わせる。これは左に外れたものの、やはり前半同様に良い入りで同点を目指した。

 しかし、これも前半同様に奈良が少ないチャンスを生かす。53分、左サイドからのロングパスを鳥取DF鈴木が処理できず、FW酒井が胸トラップで収めて左サイドへ。きれいなカウンターの形になり、MF片岡のセンタリングを浅川が右足ボレーで合わせて、この試合2本目のシュートで2-0とした。

 MF富樫が交代出場の準備をしていたタイミングでリードを広げられた鳥取は、さらに55分、前半に警告を受けていたMF世瀬が2回目の警告を受けて退場に。苦しい展開になるかと思われたが、この時間帯から強くなった追い風を受けて、逆に攻め込む回数を増やしていった。

 69分には加入後初出場となるMF長谷川を投入して攻勢を強めるが、セットプレーのチャンスを奈良GK岡田のハイボール処理などに阻まれ、決定機を作れない。83分には長谷川のスルーパスに反応したMF馬場が抜け出し、並走してきた富樫につないだが、冨樫のシュートがわずかに遅くなった間に奈良DF寺島が戻り、タックルで防いでピンチを逃れた。

 その後も奈良は押し込まれたものの、最後まで守備陣が粘り強く対応して無失点に抑え、完封勝利で3連勝。試合後の会見でフリアン監督は「我々の選手たちが信じられないくらいの結果を、奈良クラブにもたらしてくれていることを祝福したい。いま行なわれている他の試合が終わるまでは、我々が首位。皆さんは想定していなかったと思います」と喜び、最終的に暫定2位に浮上した(今節の残り2試合は4月30日に開催)。昇格1年目ながら見事な戦いを見せ、開幕戦で敗れた後の7試合を4勝3分けとして、序盤のJ3で旋風を巻き起こしている。

現地取材・写真◎石倉利英