ヴァンラーレ八戸DF饗庭瑞生が、4月9日の明治安田生命J3リーグ第6節・ガイナーレ鳥取戦でJリーグデビューを飾った。最初にJクラブでプレーしたときは出場機会をつかめなかったが、JFLでのプレーを経て再びJリーグの舞台に戻り、高校時代を過ごした山陰の地で、ついに第一歩を踏み出している。

上写真=後半開始から交代出場してJリーグデビューを飾った饗庭(写真◎石倉利英)

JFLを経て、再びJリーグの舞台へ

 第5節まで控えに入りながらも出場機会がなかった(開幕戦は他大会の影響で出場停止)饗庭は、第6節も控えスタート。しかし1-2で迎えた後半開始から交代出場し、初めてJリーグの舞台に立った。

 八戸は24分までに2失点したものの、その後に3バックから4バックに布陣を変え、前半アディショナルタイムに1点を返していた。4バックの一角に入った饗庭は「負けているので、チームを鼓舞して前向きに動けるようにすることと、自分の持ち味を出すために声を出して、激しくプレーすることを意識した」という。

 八戸は60分に2-2としたものの、64分に失点して再びリードされた。饗庭がロングボールをヘッドではね返そうとしたが、相手に競り負けたところからラストパスが出ており、試合後に「はね返しておけば失点になっていなかった」と反省点を口にしたが、試合中はすぐに気持ちを切り替えて「チームが下向きになったので、声を出して立て直しを図った」と振り返る。八戸は79分に再び追いつき、アウェーでの3-3の引き分けで勝ち点1を得た。

 長い道のりを経てのJリーグデビューだった。2020年に福岡大から当時J3のブラウブリッツ秋田に加入。2021年はJ2に昇格したクラブで定位置を目指したが(同年途中に短期間、当時JFLのFC刈谷に期限付き移籍)、2年間で公式戦出場は天皇杯での1試合のみに終わった。

 契約満了となり、Jリーグ合同トライアウトを経て、昨季はJFLの高知ユナイテッドSCでプレー。リーグ戦29試合に出場し、八戸に完全移籍してJリーグの舞台に戻ってきた。秋田時代と同じように出場機会をつかめない状況が続いたものの、「DFはスタメン以外に試合に出るチャンスは少ないですが、いつチャンスが来てもいいように、ずっと準備していた。そのおかげで今日もリラックスして試合に入ることができて、持ち味は出せたと思う」と語るデビュー戦につなげた。

 くしくもデビューを果たした鳥取は、高校時代を過ごした島根と同じ山陰地方。セレッソ和歌山U-15から立正大淞南高に進んで力を伸ばし、キャプテンを務めた3年時は最終ラインの要としてインターハイ(全国高校総体)ベスト4にも貢献している。この日の会場のAxisバードスタジアムでは初めてプレーしたが、ガイナーレが練習拠点としているオールガイナーレYAJINスタジアムでは練習試合などでプレーした縁があり、「もしかしたら今日、僕のことを知っている人がスタジアムにいたかもしれません。その中でデビューできたのはよかった」と、笑顔で『凱旋』を喜んだ。

 とはいえ、もちろん控えスタートの現状には満足していない。「今回は45分間でしたが、先発するとなればDFなので、コンスタントに平均点以上のプレーを出せるようにしなければいけない」と意気込む。チャンスを与えてくれた八戸に貢献するという強い決意を胸に「そのためにJリーグに戻ることを決断しました。チャンスをつかみ切れるように頑張っていきたい」と言葉に力を込めていた。

取材・写真◎石倉利英