藤枝MYFCのDF神谷凱士が、敗色濃厚のチームを救うJリーグ初ゴールを決めた。10月30日の明治安田生命J3リーグ第31節・ガイナーレ鳥取戦で試合終了間際に同点ゴール。川崎フロンターレから期限付き移籍中のレフティーが武器の威力を見せつけ、残り3試合となった昇格争いでの貢献を誓っている。

上写真=貴重な同点ゴールを決めた神谷。Jリーグ初得点で藤枝に勝ち点1をもたらした(写真◎石倉利英)

■2022年10月30日 J3リーグ第31節(@Axis:観衆1,451人)
鳥取 1-1 藤枝
得点者=(鳥)石川大地
    (藤)神谷凱士

「気付いたら決まっていた感じ」

 83分に先制される苦しい展開。4分と表示された後半アディショナルタイムも3分を過ぎ、右サイドでFKを得た藤枝は、GK内山圭もゴール前まで攻め上がった。だがキッカーの神谷はゴール前には蹴り込まず、右サイドのスペースに走ったMF横山暁之へパスを送る。

「確実にいくなら横山選手の方がいいのかなと思った」という選択で、「横山選手が(センタリングを)上げるときに、相手のクリアボールだけは拾えるようにと意識していた」という。その通りに相手のクリアが神谷の元に転がると、間合いを詰めてきた鳥取MF石川大地をドリブルでかわしてエリア内へ。「相手が結構、食いついたので、引っかかるなと思ってキックフェイントをした」という突破から、「コースが空いていたので、うまく蹴ることができた」と振り返る左足シュートを蹴り込んだ。

 公式記録で90+4分に決まった劇的な同点ゴール。2020年に加入した川崎Fでの2年間は公式戦での得点がなく、これがJリーグ初ゴールだった。ベンチへと走り、チームメイトや須藤大輔監督から手荒い祝福を受けたが、興奮のせいかゴールシーンの記憶はあいまいで「あまり覚えていなくて。気付いたら決まっていた感じです」と語った。

 0-0で迎えた78分から交代出場。3バックの左サイドに入り、「藤枝の流れではなかったのですが、自分はそういう流れを変える選手だと思っている。何とか自分の力で、少しずつですが流れを変えることができたらと思っていた」と振り返る。

 83分に失点して「ヤバいという感じがあった」という状況で、最後の最後に貴重な働きを見せた。ただ、すべてに満足しているわけではない。86分、左CKにヘッドで合わせたが、至近距離からのシュートが上に外れ、「あれを決めていれば、勝てていたと思う」と反省点を口にした。

 それでも、藤枝は敗れていれば松本山雅FCに抜かれて3位に後退していたが、この勝ち点1によって勝ち点63で並び、得失点差で2位をキープした。その得失点差は12のリードがあるため、残り3試合に全勝して自力で昇格を決められる可能性を、高く保つことができたという意味でも、神谷のゴールは貴重なものとなった。

 川﨑フロンターレから期限付き移籍中の25歳は、今後さらに本格化する昇格争いの重圧を楽しみにしている。「こういう昇格争いは限られたチームしかできないので、そのチームにいられる幸せもある」と語り、「選手それぞれストレスは感じていると思いますが、昇格するにはそれを、はねのけなければいけない。残り3試合に全勝して、自分たちの力で昇格を決めたい」と決意を新たにしていた。

現地取材・写真◎石倉利英