Jクラブのシャレン!(社会連携活動)から、特に幅広く共有したい活動を表彰する『2022Jリーグシャレン!アウォーズ』で、鳥取が3年連続となるメディア賞を受賞。今回受賞した夜宴(やえん)スタジアムの概要などを説明した。

上写真=夜のスタジアムを『広大な芝生広場』に見立て、たき火、夕陽、星空などを楽しめる地域の憩いの場となっている夜宴スタジアム(写真◎GAINARE TOTTORI)

密を避けながら楽しめる

 5月10日にオンラインで開催された『2022Jリーグシャレン!アウォーズ』は、2021年シーズンに行なわれたシャレン!活動の中から、各クラブがエントリーした58の活動を候補として、3種類の賞を選考。「ソーシャルチャレンジャー賞(選考基準:その地域にある社会課題解決に対してチャレンジしていること)」を、いわてグルージャ盛岡とFC琉球、「パブリック賞(※選考基準:国や自治体が掲げる政策を活用し、地域の課題解決に向けて、多様なステークホルダーと連携し、持続可能な活動となるように取り組んでいること)」を松本山雅FCとヴィッセル神戸、「メディア賞(※選考基準:記者として、自身の媒体に取り上げたいと思う活動であること)」をカターレ富山とガイナーレ鳥取が受賞した。

 このうち鳥取は、第1回から3年連続となるメディア賞を受賞。各クラブによるPRタイムで、今回受賞した夜宴スタジアムの活動について説明した。

 鳥取県米子市のチュウブYAJINスタジアム(チュスタ)は、個人や地元企業からの協賛金を財源として2012年12月に完成。隣接する養和会YAJINフィールドとともに鳥取の練習拠点となっており、明治安田生命J3リーグも年に数試合を開催している。Jクラブのホームスタジアムは多くの場合、地元自治体が所有しているが、チュスタは鳥取が所有しており、地域住民の憩いの場として整備する計画を進めてきた。

 そうするうちに近年、コロナ禍によって人が集まるイベントなどが困難な状況となっている。そこで鳥取はチュスタを『広大な芝生広場』と捉え、密を避けながら楽しめる憩いの場を作ることを発案。米子市の『米子市新規ビジネスモデル創造支援補助金(新型コロナウイルス感染症の影響下・収束後でも持続可能で、新規の需要を開拓し、広く市内の他の事業者への事業効果の波及が期待できる新規ビジネスの立ち上げを、米子市が支援する補助金)」を活用し、プロジェクトを立ち上げた。

 夜宴スタジアムはその名の通り、夜のチュスタを憩いの場にしてもらおうというもので、鳥取がホームゲームを開催しない週の金曜日と土曜日に営業している(オープン時間は季節ごとの日没時刻などで変動)。スタンドの周囲にある樹木を色が変わるLED照明で照らしてイルミネーションに変え、ゴール裏スタンドには、ポンプの電気代だけで利用可能な地下水を放出する噴水を設置。ゴール裏スタンド上部の天然芝スペースには椅子、たき火、シェードなどが用意されており、来場者はそれぞれのスタイルでゆっくり過ごすことができる。

 チュスタは小高い丘のような場所にあり、周囲の光がほとんど入ってこないため、日が沈む時間帯には夕陽や夕焼け、日没後はきれいな星空を楽しめる。2021年5月のオープン以降、米子市や地元企業との協働で少しずつ設備を充実させており、現在は用具を貸し出してのバーベキューや、キッチンカーによるフードエリアの設置が可能に。噴水やライトアップの規模も大きくなり、レーザーによる演出も行なわれている。

 鳥取の経営企画本部長を務める高島祐亮氏は、スタジアムを使っていない時間・場を利活用して企業や団体、人がつながり、サッカーだけでないクラブの地域価値を作っていきたいとした上で、「もっと協働の幅を広げていきたい。我々が地域の結節点となり、いろいろな企業様を結びつけていくことができるのではないか」とコメント。地元のコミュニティFMが配信しているプラネタリウムのコンテンツを、星空がきれいな夜宴スタジアムで配信するなどの今後のアイディアも明かした。

 今回受賞した6クラブは順次、ホームゲームで授賞式が行なわれ、鳥取の授賞式は6月19日にチュスタで開催されるJ3第13節・テゲバジャーロ宮崎戦で実施。これに合わせて18日と19日に『大夜宴祭り』と仮題がつけられた企画が進行していることも発表されている。