ガイナーレ鳥取の金鍾成(キン・ジョンソン)監督が、5月14日に就任後初の練習を行なった。前監督の解任を受けて立て直しが期待される中、約2時間のメニューで選手たち一人ひとりの動きに目を光らせている。

上写真=増本浩平ヘッドコーチと話しながら選手たちの動きを見つめる金鍾成監督(写真◎石倉利英)

ミニゲームに多くの時間を割く

「僕自身は、間が空いたけど(現場に)戻ってくることができたな、という印象。選手たちもいろいろな思いがあるはずなので、いい意味で責任を持ち、いい意味でリセットするように伝えていましたが、ちょっと緊張しているような感じもありました。でも、何日か経てば徐々に自然になっていくと思います」

 鳥取は明治安田生命J3リーグ第7節を終えて、2勝1分け4敗で15チーム中12位。5月6日に髙木理己前監督が解任され、10日に就任が発表された金鍾成監督は、約2時間の初練習を終えて、このように印象を語った。

 前日の就任会見で「1日でも早く、1日でも長く、現場でサッカーをしたかった」と語っていただけに、表情は充実感にあふれていた。初練習前のミーティングでは、3つのことを伝えたという。

「1つ目はサッカーの原理・原則。攻撃は点を奪う、守備はボールを奪う、そのために何ができるか。ゴールが近ければ、シュートから逆算していく。当たり前のことを、僕らも選手たちも見失ってしまうことが常(つね)なのですが、もう一度そこを基準にする。そうすれば優先順位もはっきりしてきます。2つ目は、会見でも話したチームとしての節度で、すき間の部分で緩むのではなく、突き抜けるためにすき間がある、という話。3つ目は、監督交代を踏まえて、いろいろなことを自分がどう捉えるか。試合がうまくいかなかったり、個人的にうまくいかないこともあると思いますが、自分の問題として、しっかりした立ち位置から改善する。個人の責任はしっかり守ってほしいと伝えました」

 約2時間のうち、ハーフコートでの6対6(プラスGK)のゲーム形式に多くの時間を割いた。ウォーミングアップのときから、あまり選手に声を掛けずに動きを見守った新監督は「いつも、あのような感じ。あまり介入したり、声を掛けたりはしません。一つ声を掛けると頭に残ってしまうので、できるだけ彼らのアイディアを邪魔しないように、と思っています」と理由を説明している。

 さらに「僕の考え方はある意味、いまの選手やチームにとっては異物。それを少しずつ入れるのか、一気に入れて副作用を起こしながら、彼らが消化するタイミングを待つのか」と今後についてコメント。「急がなければいけないとなった場合は、少しきつい薬を入れる可能性もあると思う」と、劇的な変化を加える可能性を示唆した。
 
 初采配は5月23日の天皇杯1回戦・FC徳島(徳島県代表)戦で、リーグ戦は同30日の第9節・カターレ富山戦が最初の試合となる。練習中に「ポジションは関係ないよ」と選手たちに声を掛けていた金鍾成監督は、「もちろん、いままでの流れがあり、コーチや選手たちと話しながらですが、そこにも違う可能性、僕がそういう目で見ていないことで生まれる可能性もある。そこは残しておきたい」と語り、選手の能力や起用法についても柔軟に見極めていく考えを示している。

取材・写真◎石倉利英