16年ぶりのJ1昇格を決めた東京ヴェルディの中心に、中原輝がいた。12月2日に国立競技場で行われたJ1昇格プレーオフ決勝で、清水エスパルスから同点ゴールとなるPKを誘発したのはその左足だった。7月に加わってからチームを牽引したレフティーが、爽やかに喜んだ。

上写真=中原輝が東京Vの攻撃の原動力に。左足のパスでPKを誘発した(写真◎Getty Images)

◾️2023年12月2日 J1昇格プレーオフ決勝(@国立/観衆53,264人)
東京V 1-1 清水
得点:(東)染野唯月
   (清)チアゴ・サンタナ

「染野には感謝したいです」

 夏にやってきたレフティーが、チームに鮮やかなエネルギーを加えてみせた。中原輝がその人である。

 セレッソ大阪から期限付き移籍で東京ヴェルディに加わり、7月27日の第27節ベガルタ仙台戦で緑のユニフォームを着て初出場すると、いきなり1得点2アシスト。その勢いで最終的に5ゴール4アシストを記録した。チームは最終節で3位に躍り出て、J1昇格プレーオフ準決勝でジェフユナイテッド千葉を2-1で下した。先制点は中原が左足を振り抜いて突き刺したファインゴールだった。

 そして、12月2日の決勝、清水エスパルス戦でもひと仕事してみせるのだ。

 0-1で迎えたアディショナルタイム。右サイドの自陣でボールを収めると、自慢の左足を巧みに使い、ボールをややすくい上げるような変化をつけたキックを見せた。DFの頭上を越える軌道のパスを届けるためだ。

「相手のセンターバックの選手が前への意識が強くて、これは入れ替わるな、っていう感覚はあったので、うまくボールを落とすことはできたかな」

 清水は5バックにして、手に入れた1点をていねいに扱おうとする戦いにしてきた。それでも、大事な一瞬を見逃さなかった。このパスで抜け出した染野唯月が倒されてPKを獲得した。

「ああやって、うまく染野がもらってくれた感じですね」

 あくまで仲間の好プレーを称えるあたりがこの人らしいが、ビッグプレーを引き出したのは間違いなくこの人のセンスである。

 大事な大事なPKのシーンは、落ち着いて見守っていた。

「染野がボールを持っていたし、練習でも決めているので大丈夫かなっていう感覚はありましたね。PKはプレッシャーがかかりますけど、決めても外してもその選手を責めることにはなりません。でも、決め切ってくれたことによってこうやって昇格という形になったので、染野には感謝したいです」

 ただ、90分を通してみれば苦しい時間は長かった。3位でレギュラーシーズンを終えた東京Vは規定で引き分けでも昇格が決まるのに対し、4位の清水は勝つしか道はない。

「向こうはレギュレーションの関係で勝ちが絶対に必要だから、勢いを持って入ってくるのはみんな理解していたと思います。そこをうまく耐えて、自分たちのサッカーを途中からできるようにしていこうという話をしてました」

 守勢は織り込み済み。だが、失点まではそうではなかっただろう。それでも、落ち着き払っていた。

「確かに失点はしましたけど、1点取ればまた自分たちが優位になるので、焦らずいこうと」

 それには、清水のフォーメーション変更が大きなきっかけになったのだという。

「相手がフォーメーションを変えて、ちょっと重心が後ろになってくれたので、自分たちのサッカーをやる上でボールも持てるようになりました。向こうの守りにいきたい気持ちと、僕たちの得点を取りにいく気持ちで、うまく自分たちのやりやすいような形になったのかなと思います」

 守りに入ってくれて、ボールを持たせてくれて、だから息を吹き返すことができた、という実感があったのだ。

 そうなれば、中原は自らの持ち味をピッチに投影させるだけだ。夏に加わってから、城福浩監督には「違いを作ってほしい」と言われてきたのだという。

 ゴールに関わるプレーこそ、その「違い」である。

「僕自身、悔しい思いもしてきてここに加入したので、ゴールやアシストという結果も求めていました。昇格させることも結果ですし、自分の存在価値をもう一度高めるために来たので、それを達成できてホッとしてます」

 安心のほかにもう一つ、心にやって来たのは、もちろんうれしさ。でも、それは周囲に目を配ることで得たものだった。

「僕はまだここに来て数カ月ですけど、アカデミーの選手が泣いてたり、やっぱりいろいろと苦しい時期を味わってる人たちがいて、そういう場面に立ち会えたことをうれしく思いますし、自分自身、その原動力になれたのはうれしかったです」

 そう、原動力になったのだ。

「結果を求めてきた中で、ある程度は結果という部分を出せたことは自信にもなりました。もちろん反省すべき点もまだまだありますけど、 ここ数カ月、自分自身はよくやれたのかなというふうに思います」

 自分へのねぎらいの言葉には、優しさがあふれていた。