幸運のトンボ
――そして、第38節の岩手戦では2ゴールです。
松本 9月で一番印象に残る試合でしたね。1試合で2点取るのは自分で初めてだったんですよ。
――その1点目は、ペナルティーアーク付近から冷静にゴール左隅のコースを狙った右足のミドルシュートでした。
松本 あの距離は得意なんです。最初はファーサイドを狙って打とうかと思ったんですけど、ファーストタッチが少しずれてしまって相手がコースを消してきて、そこでニアのコースが見えたのでそっちに打ちました。
――確かに打つ前に2タッチしていましたが、そういうわけだったんですね。
松本 最初にファーを狙ったときには相手もそこを狙って抑えにくるだろうと思って、ファーを少し見せるようにしながらニアに打ったらいいコースにいった、という感じになりましたね。
――そして次の2点目は、2-1で勝っているところから勝利をぐっと近づける83分のチーム3点目でした。右サイドをカウンターで抜けた嶋田慎太郎選手に並走して、そのシュートをキーパーがブロックしたこぼれ球に反応して右足で決めました。
松本 試合の終盤で相手も前がかりになっていたので、カウンターがチャンスだと思っていたところでした。嶋田選手がいいタイミングで裏に抜けそうになったときに、自分もその横についてパスをもらってシュートしようというイメージだったんですけど、こぼれ球がたまたま来て押し込んだ形になりました。
――かなりのスピードでゴール前に入りましたが、ボールは体の後ろの方向に来たので、かなり足を後ろの方に伸ばすことになりました。股関節、柔らかいな、と(笑)。
松本 いや、あれはもう、ボールが飛んできたので、とっさに打ったゴールでした(笑)。
――この試合のあとに、ご自身のインスタグラムで「試合前の整列の時肩にトンボが止まったので今日は何かあると思ってました! ありがとうトンボ」と感謝していましたね。
松本 選手が入場して横一列に並んだときに、右肩に止まったんです。すぐに気づいて、何かいいことあるな、と(笑)。
――まさに好調の象徴のトンボですね! この試合で8試合で6得点ですから、ついに「覚醒」という実感でしょうか。
松本 いや、覚醒したとは全然思っていませんね(笑)。もともとシュートは得意だったので、実は守備よりも攻撃の方が好きかもしれません。
――ボランチや、過去にはサイドバックも経験していて、守備の強みが印象的だったので、そのギャップも興味深いです。攻撃ではボールを収めた味方の近くにポジションを取るアクションが目立ちますね。9月の4つのゴールはいずれもその形です。
松本 味方の近くにいることによって、ボールがこぼれてきたり、味方も見やすくなってどこにボールを出したほうがいいかがわかると思って、近くにいることはすごく意識しているんです。