8月6日の明治安田生命J2リーグ第30節で、アルビレックス新潟が徳島ヴォルティスを迎えた。ともにボールをテンポよくつなぐスタイルを表現したが、新潟対策を施した徳島が2点を先取。しかし、新潟も意地を見せて終盤に同点に追いついて、白熱のドロー劇となった。

上写真=ピッチのあちこちで激しいバトルが繰り広げられた。新潟も徳島も譲らずドロー(写真◎J.LEAGUE)

■2022年8月6日 J2リーグ第30節(デンカS/15,094人)
新潟 2-2 徳島
得点者:(新)藤原奏哉、堀米悠斗
    (徳)一美和成2

「勝ちたかった。悔しい」とポヤトス監督

 徳島ヴォルティスにとっては勝ち点2がその手からこぼれ落ち、アルビレックス新潟にとっては意地で勝ち点1をもぎ取った90分だった。

 徳島が仕込んだ新潟対策は絶妙だった。通常の4バックではなく、3バックがベース。一美和成と藤尾翔太で2トップを組み、児玉駿斗がトップ下に入って、その後ろには白井永地と杉本太郎が構える。2トップとボランチで作る四角形の中央に児玉を置いた、サイコロの5の目のようなこのセンターラインが攻守に効いた。

 新潟は最終ラインで回しながらボランチを経由してボールを前進させるのが得意だが、ボランチがほしがるエリアに児玉を配置して見張らせることで、パスのリズムを分断した。ダニエル・ポヤトス監督が「新潟のボランチを消すことを意識した」と明かしたシステム変更の狙いがきれいにはまり、児玉の脇のエリアが狙われれば、白井と杉本が激しくつぶしにかかる。17分の先制ゴールはこれが効いた。

 最終ラインから早川史哉が中盤に送ったボールを松田詠太郎が受けるところで判断が遅れ、浜下瑛が寄せて児玉が回収。素早く右に展開してから藤尾が抜けていき、マイナスに戻したボールを白井がシュート、GK小島亨介がはじいたものの、こぼれ球を一美がプッシュした。中央で距離感よく並んでいたからこそ、厳しいプレスと素早い攻撃が可能になった。

 58分の2点目は自陣から右サイドで前後につないで崩してから。古巣対決となる新井直人が児玉に預けると、内側を走り抜けた白井へスルーパス、さらにドリブルで進んでクロスを送ると、逆サイドから迫力を持って中央に入ってきた一美がヘッドでたたき、バーに当たったボールがゴールに転がり込んだ。

 新潟にボールを持たれれば、両ワイドの選手が最終ラインに戻って3バックから5バックに整え、幅を埋めていく。後半もまったく強度が落ちずに、逆にテンポが上がらない新潟の選手たちが感情的にプレーするシーンが目立っていった。

 ところが、ここまでほとんど完璧だった徳島の牙城を、新潟が崩すのだ。61分に両サイドハーフを、72分には両ボランチをそれぞれ同時に入れ替える交代策で刺激を入れた。特にボランチ2枚替えは、松橋力蔵監督が「(交代で入った島田譲と秋山裕紀は)長いボールや、相手の逆を取る特徴を持った選手なので、裏をかきながら揺さぶりたかった」と語ったとおり、展開を変えるのに大きな効果を発揮して、徐々に主導権を握っていった。

 78分には高木が自ら倒されて得た左からのFKを中央へ、逆から飛び込んだ藤原奏哉がヘッドで押し込んで2試合連続となるゴールで1点を返した。これで試合の行方がわからなくなった。

 徳島の強度が極端に落ち、いつものように新潟の即時奪回が機能すると、85分にはついに追いつく。右サイドでボールを細かく動かしながら、秋山がゴール前へ。左サイドバックの堀米悠斗が走り込んでヘッドで押し込み、今季初ゴールが貴重な同点ゴールとなった。

 このあとも新潟が連続で押し込み、徳島が最後の力を振り絞ってカウンターを仕掛ける時間が続いたが、このまま終了。ともに痛み分けとなった。

 徳島の対策に苦しんだ新潟の松橋監督は「工夫が足りなかった」と振り返る。

「スピードアップする一歩手前のところまでは入りますが、そこからのテンポアップはスペースのない中でどういう形から背後を奪うか、残念ながら出すことができませんでした。勇気を持って中央へ入っていくといったバリエーション、工夫が少し足りなかった。それも含めて私の責任だと思っています」

 ポヤトス監督は「今日は勝ちたかった。悔しさのほうが大きい。選手はインテンシティを含めてしっかりオーガナイズを組んでくれたので残念」と厳しい表情で語るのも当然だった。しかし、新潟対策を綿密に練ったポヤトス監督、大胆な交代策で流れを変えた松橋監督と、指揮官の手腕も楽しめた真夏のナイトゲームになった。