ジェフユナイテッド千葉の尹晶煥監督は、7月30日の明治安田生命J2リーグ第29節ファジアーノ岡山戦で、3バックを「復刻」させた。結果はアウェーで追いついてのドロー。手応えを確かなものにするために、8月7日のザスパクサツ群馬戦の必勝を誓っている。

上写真=尹晶煥監督は群馬の強い気持ちとカウンターを警戒(写真提供◎J.LEAGUE)

「一瞬の失点はもったいない」

 J2第29節のファジアーノ岡山戦、77分のことだった。自陣のペナルティーエリア手前で相手のパスミスを拾ったところから一気にドリブルで持ち運んで、相手をひきつけて左へ。折り返しを中央でプッシュする同点ゴールが生まれた。決めたのはチアゴ・デ・レオンソで、実に10試合ぶりのゴール。ていねいに折り返したのは、71分からピッチに入っていた櫻川ソロモン。

 そして、伸びやかに自陣からのロングドリブルで突き進んだのは、田邉秀斗だ。川崎フロンターレから育成型期限付き移籍で7月21日に加わったばかりで、これが初出場初先発だった。

「4バックだと後ろが耐えるのが厳しい状態が続いていて、変化させたかったんです。田邉が入ってきてうまくできたなと」

 しばらく4バックで戦ってきた尹晶煥監督は、シーズン当初に採用していた3バックへの回帰を決断した。「練習でいいところを見せていて、本人も3枚の左がいいという話だった」という。

 それがいきなり、守備だけではなく攻撃で、しかも55分に先制されて0-1の状況からスコアを振り出しに戻すゴールを生んだのだ。

「まだ慣れていないところもあると思うんですけど、点になったシーンを見ていたら運ぶ力もスピードもあったので、もっと良くなるような感じはしました」

 プロ2年目でリーグ戦の出場はこれが初めてとなったが、川崎Fでもまれてきた技術と判断、攻撃センスの高さはやはり特別だった。

 その田邉を加えた3バックを基盤にした3-4-2-1のフォーメーションでは、守備になれば5バックに増強して引き込むこともできるから、安定感は増す。「3枚にして後ろは安定しているように見えました」と尹晶煥監督も一定の評価を与えた。

 上位の岡山にアウェーで追いついてのドローは悪くはないが、シーズンも終盤に差し掛かる時期で、さらに勝ち点がほしいのも事実。

「試合の流れで疲れてきたときに対応できないときがあって、集中力についてはいつも話しているけれど、一瞬で自分のポジションなくしてマークを失うことがある。一瞬のところで失点しているのはもったいないなと」

 だから、続くザスパクサツ群馬戦は無失点という結果を残したい。

「守備ではもう一度、確認する時間も作って、うちのシャドーとウイングバックの間で受けにくることが多いので注意しています。攻撃では、相手が低めにリトリートして守備をするので、なかなか崩すのが難しい。何とか点につながるようなプレーをしていきたいと思います」

 尹晶煥監督は常に「集中力」「強い気持ち」と呼びかけて鼓舞するが、その点は群馬の大槻毅監督も得意とするところ。気持ちと気持ちのぶつかり合いの中で、どちらが技術で上回るか。

「群馬は失点しないところがベースになっているチームで、カウンターを素早く点につなげてくる印象です。負けていてもあきらめずに最後まで戦うチームに変わっているように見えます。そんな相手の攻撃にどう対応できるか、厳しく守ってくるチームにしてどれぐらいシュートに持っていけるかの勝負になると思います」

 千葉はプレーオフ圏内の6位と勝ち点6差の13位。群馬は残留争いに巻き込まれて20位。ここで3ポイントを取ることが、どちらのチームにも大きな影響を与えることになる。尹晶煥監督は改めて「きついときに一歩前に進んでくれれば流れが変わってくる。積極的にやってほしいし、選手の気持ちが乗ればどんどん行くと思う」と大きな期待を寄せている。