6月26日、明治安田生命J2リーグ第23節で、アルビレックス新潟は横浜FCとの「頂上決戦」に0-2で敗れて首位を明け渡した。7試合ぶりの黒星、16試合ぶりの無得点だった。後半戦に入って徹底的に対策され追われる立場でも、勝ち続けるために必要なものとは。千葉和彦と松橋力蔵監督の言葉から考える。

上写真=千葉和彦は「負けを引きずらない」と切り替える(写真◎J.LEAGUE)

■2022年6月26日 J2リーグ第23節(ニッパツ/9,100人)
横浜FC 2-0 新潟
得点者:(横)小川航基、渡邉千真

「詰めていくだけ。何度も何度も」

 J2は後半戦に入り、2巡目の戦いでは徹底的な対策を仕掛け合う。特に昇格を争うチームに対しては、なりふり構わない守備戦術を施すチームもある。新潟は特に昨季、前半は絶好調だったにもかかわらず、後半に入って相手に強みを消されて停滞した苦々しいトラウマがある。

「上回っていかなければいけないですよね」

 千葉和彦の思いはシンプルだ。相手の準備を超える戦いをするだけ。自分たちに厳しく目を向けるポリシーは、「次の相手が最強の相手」「1試合1試合、目の前の試合に集中していく」「最後にどこにいるかが大事」と唱え続ける松橋力蔵監督のそれと完全に一致している。

「横浜FCさんも彼らの戦い方を捨てながらというか、新潟の良さを消しながら向かってきたところがあるので、自分たちがそれでもはがせなかった部分では横浜FCさんの方に勝因があったと思います」

 千葉はそう認める。負けは悔しい。だが、悔しいだけでは次に勝利を手にすることはできない。負けを受け入れなければ次への準備は始められない。

「相手が自分たちを引き込んできた中で、こちらが最後の1本を通せば決定的なチャンスになるところで合わなかったことが多かったと思います」

 前半はいつものようにボールを動かしたが、小さなズレが散見された。後半になると、横浜FCはさらに守備を強化してきた。ターゲットの一つが千葉だった。

「特に後半は前線から自分のところにはプレスが来ているなと思っていて、自分のミスもありますけど、ビルドアップがしにくかった印象があります」

 2トップがこちらのセンターバック2人のボール回しのリズムを壊しにくる、というメカニズムは、これから対戦する他のチームもコピーしてくる可能性がある。

 その点で言えば、この日の最初の失点に至る流れも真似されるかもしれない。新潟から見て左サイドから真横にパスをつながれ、つまり最終ラインの前にできるスペースをやすやすと横断された。そして、右からカットインしてきた長谷川竜也のクロスを中央で小川航基にヘッドで合わされた。ボールが横に動くのを目で追いながら最終ラインが下がり、長谷川に自由にプレーする場所と時間を与えてしまった。松橋監督はラインが深くなったことに改善の余地があると分析する。

「ボールが動いている状況によってライン設定は決まってきますが、むやみに上げられない状況ではあったものの、深くなっていたとは思います。得点をとった選手(小川)に角度をつけて入ってこられましたから。そこは詰めていくしかないですね、何度も何度も」

 失敗はつきものだが、それを次の1週間でどう解消するか。

「あまり針を振りすぎるのは好きではないんです。精神的な安定や自信を回復させることも大事だし、ポイントになることは共通意識を持たせますが、そのバランスを取るのが大事だと思います」

 負けを取り返すために新しい何かを、と求めがちだが、その「ゆらぎ」こそが危険因子なのだと諭す。

「サッカーは最終的にどっちに転がるかだけだと思っていて、今日はそれが相手に転がったということだと思います」

 もちろん、松橋監督だから細部に目を向けないはずはないが、勝っても負けても大きく構えて動じることはない。それが、今年の新潟の最大の強みである。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE