ジェフユナイテッド千葉が前節首位のベガルタ仙台を打ち破ってみせた。勝利のヒーローは先制点を決めたFWブワニカ啓太と、仙台の猛攻を止め続けたGK新井章太。4バックへの移行もスムーズに完了させ、2-0の快勝を収めた。

上写真=ブワニカ啓太が先制点。しっかりゴール前に入っていった準備が歓喜を生んだ(写真◎J.LEAGUE)

■2022年6月5日 J2リーグ第20節(フクアリ/7,401人)
千葉 2-0 仙台
得点者:(千)ブワニカ啓太、見木友哉

「あの空間は見えていました」とブワニカ

 24分で3バックの左の鈴木大輔が負傷で交代。ケガ人が続出するチームにあって、まさか守備の要のキャプテンまでが、と暗雲が立ち込めた。

 そこで登場するのが、ブワニカ啓太である。FWだが?センチの長身を生かして代わりにセンターバックに入る、わけではなく、3-4-2-1から4-4-2へのシフトチェンジを行って、チアゴ・デ・レオンソと最前線に立った。

 すると後半開始早々の47分に、さっそく答えを出したのだ。右からの西久保駿介のクロスをファーでチアゴが相手と競り合いながらヘッド、こぼれたボールが、ゴール前に詰めていたブワニカのところに吸い寄せられるように飛んできた。

「あ、上にある」

 つまり、滞空時間が長いということをとっさに悟ったわけだ。

「だいぶ高く上がっていて時間があったので、しっかりゴールと相手の位置を見て、いないところに落とせば絶対に入るシュートだったので、意識して打ちました。あの空間は見えていました」

 ヘッドでしっかりゴール右に打ち込んで、先制ゴールを決めてみせた。4バックは練習しないままのぶっつけ本番、なんとか前半を耐えて迎えた後半の開始直後のゴールだったから、勢いがついた。2分後には見木友哉がカウンターからGKとの1対1を確実に仕留めて、あっという間に2点のリードを奪った。

 こうなると、仙台がよりパワーを攻撃にかけてくる。そこで立ちはだかるのが新井章太である。65分にはフォギーニョのヘディング、72分には中山仁斗の左足と、ともに至近距離からのシュートに機敏に反応し、どちらもゴールを割らせはしなかった。

「余裕じゃないですよ、もうぎりぎりすぎて」

 そう言って笑わせたが、「普段の練習が出てるかなと思いますね。どういうボールでも食らいつくという意識が自分の中であるので、普段から続けていくことが勝ちにつながると思います」と充実の表情だ。

「みんなも盛り上がってくれるし、キーパーの仕事は相手のチャンスをつぶすことが一番。どうしても取れないシュートでも入ると嫌でスッキリしないんですよ。今日のような試合の方がすっきりするし、そこにはこだわっていきたいと思います」

 確かにスーパーセーブにスタンドが沸き、「それも含めてのチーム一体ですから」と新井が喜んだように、場内のポジティブな反応が選手の足を動かす原動力になった。

 そんな勝利のポイントが4バックへのスムーズな移行にあったのは間違いないが、面白いのが、ブワニカも新井も「何も考えなかった」と声を揃えたことだ。新井がさらに詳しく状況を明かす。

「相手も4-4-2なのでジャストで当たりにいけるのは、正直3パックよりも負担はなかったですね。ボールに行きやすいし、はがされたあとでも後ろの4枚で守ればいいという感覚だったので、何も考えずにできました」

 負傷者が出ることが望ましいわけはないが、そのことで新たな戦い方に光明が見えたのも確か。まさにケガの功名になった。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE