アルビレックス新潟は3月30日の明治安田生命J2リーグ第7節で、ジェフユナイテッド千葉に0-1で敗れた。90+5分にセットプレーから決勝ゴールを許す苦々しい黒星だったが、島田譲はすべてを上回るために極めなければならないと誓ったことがある。

上写真=島田譲は守備に攻撃にハイパフォーマンス。しかし勝利に結びつかずに悔やんだ(写真◎J.LEAGUE)

■2022年3月30日 J2リーグ第7節(フクアリ/4,852人)
千葉 1-0 新潟
得点者:(千)鈴木大輔

「細かい判断をできる選手が揃っていた」

 0-0で試合を閉めたかった90+5分に、まさかの失点。新潟から見て右CKから、鈴木大輔にニアに入られてヘッドで流し込まれた。アウェーでの勝ち点1がその手からこぼれ落ちた。

 アルビレックス新潟は3月30日のJ2第7節でジェフユナイテッド千葉と対戦。フクダ電子アリーナでは一度も負けていないという相性の良さは、生きなかった。どれだけタフに戦っても、最後の最後で失点しては勝てないという教訓の苦い味が残った。

 島田譲はだから、そこまでにどれだけ素晴らしい守備をしても意味がなくなってしまったことを悔やんだ。67分にCKのこぼれ球から末吉塁に強烈に打たれたが、これをダイビングヘッドでクリアした守備に、こだわりがのぞく。

「前節に同じようにセットプレーのこぼれ球で一瞬のスキができてやられていて、この試合では集中してセットプレーに入っていました。相手もそこに力をかけてくるチームだったので、あのシーンはうまくいきました。でも、最後にああいう形で失点してしまって」

 そこまでの戦いでチャンスがなかったわけでは、もちろんない。2連勝の新潟に対して2連敗の千葉。勢いはこちらにあり、前半は主導権を手渡すことなく試合を進めた。しかし、後半に守備を整え直した千葉に行く手を阻まれた。ゴールをこじ開けるために、74分にセンターフォワードの谷口海斗を下げてサイドハーフのイッペイ・シノヅカを投入した。最前線に特定の選手を置かない、いわばゼロトップのような形で先制点を目指した。

 松橋力蔵監督は、その狙いをこう明かす。

「ワイドなところに起点を入れて、高木(善朗)と(伊藤)涼太郎が相手の出方を見ながらライン間に落ちたりしながらコンビで崩したり、一瞬のスキでイッペイが背後を取ったりと相手に的を絞らせないようにしましたが、最終的には点につながりませんでした」

 意外性を生み出す狙いだったが、島田はこのとき、ボランチとしていかに攻撃のタレントを生かしていくかに注力していた。

「正直、形としては初めてでしたが、もちろんイメージとしては持っていました」

 スクランブル的な布陣だったことを明かすが、成立させるだけのメンバーが揃っている自負もあった。

「ライン間で受けるのかライン上で受けるのか、前を向くのか前向きの選手を使うのか、そのあたりの細かい判断をできる選手が揃っていたのでやりたかった」

 島田がミドルパスで背後のスペースに送り、中央からシノヅカを飛び出させた78分。島田が右の高木に預けて広げ、シノヅカが裏抜けして受けて送った鋭いセンタリングに伊藤が合わせた84分。相手クリアを拾った島田が左から中央へ低いスピードボールを流し入れ、本間がスルーして高宇洋がミドルシュートで狙った90分。島田起点で少なくとも3つのチャンスはあったから、ゼロトップが完全な不発だったとは言えない。だが、ゴールにならずに島田にも反省を残した。

「真ん中に人が多い分、カオスっぽくなって、どこに誰がいるかを自分たちで把握しきれていないので、瞬間瞬間で自分たちで見て判断していきましたが、足りませんでした。やりきれずにファウルを含めて止められたのは課題です」

 前半からボールの受け手となる谷口や高木、本間への集中守備でリズムを分断されていた。だが、それを上回ることが必要だ。

「ファウルさせないぐらい握って、相手にボールを触らせないぐらいに回して、ゴールまで運ぶことを極めないといけないと思います」

 それが島田の、アルビレックスのプライドだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE