ピーター・ウタカへのピンポイントパスは成長の証だ。京都サンガF.C.は明治安田生命J2リーグで首位に立ち、残り12試合でラストスパートをかける。直近のモンテディオ山形戦では、飯田貴敬が先制弾を導くミドルパスで貢献。攻撃面での成長を実感している。

上写真=飯田貴敬は山形戦では先制弾を導くパスが冴えた。得点につながるプレーを増やす意欲満々だ(写真提供◎京都サンガF.C.)

「甘えもあったのかなと」

 京都サンガF.C.が「再点火」だ。FC琉球に2-1、モンテディオ山形に2-0と、上位相手の連戦でともに白星を手にして、またもや首位。3位アルビレックス新潟とは勝ち点10の差をつけて、昇格へのルートが見えてきた。

 ただ、その直前はヴァンフォーレ甲府に0-3、松本山雅FCに2-2と勝てておらず、飯田貴敬は「勝てなくて悩んでいた時期もあった」と正直に明かす。

「受けに回ってしまったというか、いいときは攻撃でも守備でも先手先手で動いていましたが、勝てていないときは相手主導になって、試合の流れを全員で見てしまったところがありました。それでも勝てるだろう、という甘えもあったのかなと思います」

 好調のジレンマだった。それを乗り越えてからの、上位陣への連勝は大きな自信になる。山形戦はボールを握られる時間も長くなったものの、耐えながら複数得点を重ねた上で5試合ぶりの無失点と、最終的には満足のいく結果になった。先制点は44分に宮吉拓実がゴール前で相手の中途半端なクリアを拾って流し込んだものだったが、きっかけは飯田のミドルパス。

 山形の右サイドに大きなスペースが空いていて、ピーター・ウタカがDFの間を中央から斜めに走るのを見逃さずに、右サイドバックの飯田が素早く送り届けた。ウタカがGKをかわしてシュート、カバーに入ったDFのそのクリアが短くなって宮吉が蹴り込んだのだ。

「狙い通りのパスでした。相手が圧力をかけてきて行けるぞというときにパス一本でやられるとメンタル的に落ちると思いますし、相手が嫌なことをすることはいままではあまりなかったので、そこをピンポイントで突けるようになったのは、今季伸びたところだと思います」

 どうやったら勝てるのか。それを考え抜いて積み上げて手にしたものが、相手の嫌なところを突く賢さだった。7月の取材では「ゴールやアシストのところでのびしろがある」と自己分析していた。あれから2カ月の現在地は?

「いままでは試合前に、チームを勝たせるのが役割だと考えていたけれど、自分が点に絡むことを意識していなくて、でも日が経って、勝たせることにプラスして自分がどうやって点に絡むかにフォーカスできるようになってきました。2カ月前から比べて成長だと思います」

 その発露が、ウタカへのあのパスだった。残りは12試合。のびしろはまだまだあるはずだ。