上写真＝櫻川ソロモンは最前線から守備のスイッチを入れ続けて、大きな存在感を示した（写真◎J.LEAGUE）
■2021年8月14日 明治安田生命J2リーグ第25節（＠フクアリ/観衆3,193人）
千葉 0-0 新潟
五輪トレーニングパートナーの経験が生きた
驚きのパワーだった。アルビレックス新潟の不動のセンターバック、舞行龍ジェームズが苦しめられている。立ち向かっていったのは、櫻川ソロモン。ジェフユナイテッド千葉のセンターフォワードとして今季2度目の先発起用に応えて、攻守の急先鋒になった。
尹晶煥監督の意図は明らかだった。「トレーニングの中でもパワーを見せたし、以前と比べて動き出しが良くなりました。相手の選手たちを疲弊させてかき回すことを考えました」という言葉通りのプレーぶりだったからだ。空中戦で舞行龍と何度も競り合って弾き飛ばせば、中央からあまり大きく動かないことで舞行龍と千葉和彦のセンターバックコンビを中央に踏み留まらせた。
そしてなんと言っても、プレスの強度と連続性だ。千葉は前節、モンテディオ山形の攻撃にナイーブになって引きこもり、そのせいで1-3で敗れた。尹晶煥監督はボールへのアプローチが足りなかったことを何よりの課題に挙げて、この試合に臨んでいた。その意を受けて、櫻川は猛然とプレッシャーをかけていった。
「チーム全体で気持ちが見えるプレーができていたと思っていますし、自分としても前からの献身的な守備から入って、後ろの選手に見せた上で、ついてこい、じゃないですけど、そういう姿を見せていければいいと思っていたので良かったです」
強い意志を感じさせる言葉だった。自分が先頭に立って、味方を鼓舞していく。リーダーシップの芽生えだ。
東京オリンピックの前には、大会に臨むU-24日本代表のトレーニングパートナーに選ばれて、ともに過ごす時間は貴重だった。
「トレーニングパートナーとして帯同させてもらって、（吉田）麻也さんをはじめセンターバックの選手にも、それから前線の選手にもいろいろ教えてもらって、吸収して帰ってきました。今回の試合で生きた部分も生きなかった部分もあったけれど、良かったと思います」
チームに戻ってから感覚が研ぎ澄まされて、「ポストに入ったときの攻め方やゴール前への入り方、タイミングが帰ってきてから良くなったと思います」と自信をつかんだ。
前線で存在感を示し、守備に大きく貢献したから、ゴールへの期待は高まる。今季はまだ1ゴール。
「フォワードは点で勝負するポジションでもあるので、結果にこだわっていくべきですし、練習でも試合でも意識してクロスの入りやゴール前で迫力のあるプレーができればいいと思います」
身長190センチ、体重91キロの体躯は、相手を脅かすパワーに満ちている。そのフィジカルに加えて、ゴールを陥れる本当の意味での迫力を身につけたら、手に負えなくなりそうだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE