上写真=千葉の守備の迫力は、新潟が得意とするパスをも分断していった(写真◎J.LEAGUE)
■2021年8月14日 明治安田生命J2リーグ第25節(@フクアリ/観衆3,193人)
千葉 0-0 新潟
「価値のある勝ち点1だった」とアルベルト監督
どちらにもゴールは生まれなかったが、お互いにスキを与えない引き締まった好ゲームになった。
序盤から、千葉が新潟をよく研究していることがわかる展開になった。相手の最終ラインにボールがあるときは1トップの櫻川ソロモンに右の矢田旭(負傷交代で17分からは船山貴之)、左の見木友哉が連動してパスのコースを限定し、前に出されたときにはウイングバックとボランチ、右なら福満隆貴と熊谷アンドリュー、左なら末吉塁と田口泰士がパスの出どころで厳しく抑えていく。前半のほとんどの時間は新潟の陣内で行われた。
新潟にとってはこれは珍しいことだった。テンポよくボールを動かして相手のプレスをかいくぐって運んでいくスタイルだが、ここまで相手の守備にはめられて苦しむのはめったにない。あったとしても、これだけ長時間、ボールを手放したことはないだろう。
ビッグチャンスが多かったわけではないが、どちらもゴールに近づいたシーンはあった。12分に新潟が右から左に素早くボールを走らせて堀米悠斗が左に流れた谷口海斗へパス、ニアサイドを鋭く狙ったがGK新井章太がセーブした。33分には千葉が相手のバトルからこぼれ球を拾った見木友哉が強烈なミドルシュート、これはGK小島亨介がわずかに触って事なきを得た。40分には25メートルほどのFKを船山が狙いバーに直撃。
千葉のポイントは櫻川ソロモンと熊谷アンドリューにあったのではないか。どちらも体の強さを生かしてキーマンをストップ。櫻川が舞行龍ジェームズをつぶしにかかり、熊谷が高木善朗や福田晃斗に襲いかかった。呼応するように周りの選手もボールへのアプローチが鋭く、新潟の選手から判断する時間を奪っていった。主導権を握り続けた千葉がいつもの新潟のようで、押し込まれた新潟が前節の千葉のようにも思える攻防だった。
後半開始早々の50分、新潟のGK小島がキャッチする際に見木と接触して地面に強く落下し、脳しんとうの疑いで交代を余儀なくされたアクシデントがあった。それでも代わって入った今季初出場の藤田和輝は安定。新潟には61分、堀米の左からのクロスに右から入ってきたロメロ・フランクが合わせたが左に切れるビッグチャンスもあった。
しかし、大きな流れは前半と同じ。千葉の鋭い守備意識が新潟を苦しめて追い込んでいくと、新潟はパスミスが連続するなどリズムに乗れない。新潟は78分に前線の3人を一気に交代させ、千葉も加入したばかりの檀崎竜孔らを投入してチャンスをうかがう。
千葉の尹晶煥監督は「前進しての守備はできた」と前節からの改善に成果を見出した。評価を与えたのは新潟のアルベルト監督もで、「質の高い選手が揃うジェフさんのプレスに苦しんで、なかなかビルドアップできなかった」と振り返って、千葉の意地の守備を認めた。こうしてお互いに中盤で迫力満点のバトルを見せたものの、ゴールはどちらにも生まれずに0-0のまま、勝ち点1を分け合った。それでもアルベルト監督は「価値のある勝ち点1だった」と悪いなりにつかんだ1ポイントを大切に持ち帰った。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE