いよいよ再開となった明治安田生命J2リーグ。8月9日の第24節でアルビレックス新潟はホームに大宮アルディージャを迎えた。試合のほとんどを支配していたのは新潟で、前半にしっかり先制、追いつかれてもアディショナルタイムに勝ち越すのだが、大宮がその1分後に決めて劇的にドローに持ち込んだ。

上写真=大宮はアディショナルタイムに突き放されたが、1分後に西村慧祐(24)が決めて意地のドローに持ち込んだ(写真◎J.LEAGUE)

■2021年8月9日 明治安田生命J2リーグ第24節(@デンカS/観衆12,587人)
新潟 2-2 大宮
得点者:(新)島田譲、谷口海斗
    (大)中野誠也、西村慧祐

「選手の成長を感じた」と霜田監督

 クライマックスはアディショナルタイムに待っていた。アルビレックス新潟が前半に先制しながら大宮アルディージャが後半に追いつき、1-1で迎えた90+4分。星雄次が右からクロスを送り、DFのクリアが逆サイドに流れたところを拾った谷口海斗が、鋭く中に切り込んでから右足を振り抜いてミドルシュート。ゴール左に飛び込んで、2-1と勝ち越したのだ。

 だが、ここで終わらない。アディショナルタイムの目安は6分。残り時間は少なかったが、大宮はあきらめない。次のキックオフからゴール前にロングボール、ヘッドでつないで中野誠也がヘッドで落としたところに西村慧祐がいた。「迷わず足を振りました」とボールの落ち際に思い切りよく右足ボレーでボールをたたくと、力強くゴールに飛び込んだ。

 これで新潟は勝ち点2を取りこぼし、大宮は勝ち点1を拾った。新潟のアルベルト監督は「フットボールはときに不公平なもの」と押し込みながら勝てなかったことを嘆き、大宮の霜田正浩監督は「勝ち点3を取れなかったが、最後に追いつけて選手の成長を感じた」とうなずいた。

 そのアディショナルタイムを除けば、試合をコントロールしていたのは新潟のほうだった。

 ボールを動かしながらゲームを作る新潟のようなチームに対抗するには、キックオフ直後のラッシュが効果的になる。大宮は新潟がテンポをつかむ前に分断して、一気に攻めきってしまうという寸法だ。

 だが、長くは続かなかった。新潟が一枚上手で、大宮のプレスの強度を利用してすぐさま勢いを外しながらボールを回して、自分たちのリズムに引き込んだ。そこからは新潟のペース。ローテンポからの急激なスピードアップや、左右に素早くボールを流し込んでポイントを作ってから組み立てるなど、強みを存分に生かした。

 そして、先制ゴールは33分。高木善朗のFKが壁に当たったこぼれ球をすかさず島田譲が拾って右へ、藤原奏哉が突破してクロス、DFのクリアが短くなったボールが島田の利き足である左足の前にこぼれてきて、そのままていねいにゴール左へと流し込んだ。

 大宮はこの夏に補強したGK南雄太、FW河田篤秀を先発でデビューさせて臨んだ。河田は前線からのプレスの強度を高めることに貢献し、そして南がビッグプレーでチームを引っ張った。後半開始早々の52分に与えたPKのシーン、一度左に踏み込んでおいて右に飛ぶと、キッカーの本間至恩が蹴った中央へのシュートをブロック。絶体絶命のピンチを救ったのだ。霜田監督も「さすが」と感嘆したビッグプレーで、大宮は崩れずに済んだ。

 ここからは両チームとも交代策を利用して目まぐるしい攻防を繰り広げていく。すると、それがいきなり的中したのが大宮だ。71分に投入された中野誠也が1分後にファーストプレーで蹴り込んで同点ゴール。同じく交代で57分に入っていた柴山昌也がボールを力強く奪いきってからのショートカウンターで一瞬のスキを突いて、振り出しに戻した。

 このあとも、大宮が時折押し込みつつも、大きな流れは新潟優位で進んだ。アディショナルタイムには91分に谷口のヘディングシュートがポストに弾かれ、直後の鈴木孝司の至近距離からのシュートはわずかに左に切れ、その勢いが谷口の勝ち越しゴールへとつながった。

 しかし、大宮が追いついた。サッカーは何が起こるか分からない。

写真◎J.LEAGUE