明治安田生命J2リーグは中断中で、8月9日に再開する。首位には京都サンガF.C.が立っていて、昇格をつかみ取る後半戦だ。アグレッシブにゴールを目指す今年の京都のスタイルで、飯田貴敬も生き生きと駆け回っている。サイドバックでありながらサイドバックらしくない理由とは。

上写真=飯田貴敬は6日間のオフに小さい頃に練習したグラウンドを再訪。「初心に帰るというか、パワーを貯められました」(写真提供◎京都サンガF.C.)

「背後に相手がいてもまったくストレスはない」

 京都サンガF.C.でチョウ・キジェ監督と選手たちが表現しようとするフットボールは、次々に選手が前を向いて、ゴールに向かって迷いなく進んでいくところが最大の魅力だ。

 右サイドバックの飯田貴敬の動きを見れば、それがよくわかるだろう。一般的な「サイドバック」とは異なるスタイルに引き込まれるはずだ。ゴール前に進出していってフィニッシャーの役割も果たすのも、当たり前の光景だ。

「サイドバックとしてはかなり高いポジションを取りますね。知らない人が見ると危ないんじゃないかと思うかもしれませんが、サンガのスタイルからは逆にそこに行かないほうが危ないんです。そこにサイドバックがいることで、押し込めるからです」

 高いエリアにサイドバックの選手がポジションを取ることで、即時奪回の可能性がぐんと高まる。そこにいなければ、相手にフリーで持ち運ばれて攻撃を許すことになるのだ。

「カウンターを受けてもオギ(左サイドバックの荻原拓也)と自分のスピードだったら戻れるよね、というベースの下でやっているので怖さはありませんし、自分の背後に相手の選手がいてもまったくストレスはないんですよ。ちゃんと戻れるよ、という気持ちでやっていますから」

 この「戻れるよ」というフレーズは、チョウ・キジェ監督が就任して臨んだキャンプのときから、京都の選手の口癖のようになっている。自分が攻めたあとの裏のスペースを気にしながら、バランスを重視してプレーするサイドバックが多い中で、押し込むことで逆にリスクを消し、仮に背後にボールを送り込まれてもすかさず帰陣する速さとパワーを備えているという自負がある。そして、本当に戻れるのだから、ブラフではない。

「相手からしたら、なんでオレのマークをしないで、オレより前にいるんだよ、と思うかもしれませんけど、そこは駆け引きもあるし、決して相手をなめているわけではなくて、それがこちらのやり方で、そこに自分の判断を入れながらプレーしています」

 闇雲に高い位置を取っているわけではない。中断前最後に1-1で引き分けたアルビレックス新潟戦で高木善朗に許した唯一の失点は、飯田が対峙していた本間至恩のドリブルが起点になって横パスを送られ、ミドルシュートを決められたもの。ただ、裏を取られたり縦突破を許したわけではなく、飯田の守備の対応としては悪くはなかった。

「守り方としては間違ってはいませんでしたが、結局はあそこから失点につながったので、ほかに守ることができる方法があったんじゃないか、とは考えています。崩された失点ではないし、普段どおりだったらまったく何もないシーンだと感じています」

 もちろん、間違いではなくても失点するのがサッカーの難しさだが、ドリブルの対応にはそもそも自信がある。前半戦では一度もやられたことはないと胸を張るのだ。

「どのチームも左サイドハーフに本間くんのようなドリブルにキレのある選手を置いてきています。だから、本間くんだからといって何かを変えたつもりもありません。それに、ドリブルで仕掛けられても、前半戦ではがされたシーンは一つもないですし、相手もきっと自分のちょっとした間合いや駆け引きで仕掛けにくいと感じていると思います。仕掛けてくる前にパスで逃げさせるような駆け引きをしていましたから。そこは一つ成長したところだと思います。でも、後半戦はどのチームもうちに勝ちに来るために、そこはガンガンくると思うので、レベルを上げないとだめですね」

 8月9日に再開するJ2リーグの後半戦、京都の試合はぜひ、「飯田目線」で見てほしい。選手たちが意欲的に取り組んでいるフットボールの狙いの一つを垣間見ることができるはずだ。