明治安田生命J2リーグ第23節は中断前のラストマッチ。7月18日に行われた大宮アルディージャ対FC琉球のゲームは、鮮烈のボレーで幕を開けた。8分に琉球の上原慎也が決めたのだが、思い切ってゴール前に入って、思い切ってシュートを打った判断が生んだものだった。

上写真=大宮対琉球は8分のボレー弾で幕開け。決めた琉球の上原慎也がこの笑顔!(写真◎J.LEAGUE)

■2021年7月18日 明治安田生命J2リーグ第23節(@NACK/観衆4,567人)
大宮 2-2 琉球
得点者:(大)イバ、黒川淳史
    (琉)上原慎也、赤嶺真吾

「得点は良かったですけど…」

 美しいジャンピングボレーシュートが、大宮アルディージャのサポーターがその向こうに陣取るゴールに吸い込まれていった。開始わずか8分、FC琉球の先制ゴールは上原慎也の右足から生まれた。

 左からのFKは逆サイドに流れたが、そのまま今度は右から崩してペナルティーエリアの中で受けた阿部拓馬が顔を上げると、逆サイドで上原がフリーになっていた。そこへ柔らかいクロスが飛んでくる。

「監督からは、逆サイドからクロスが入るときはゴール前に入っていっていいよと言われていました。高さもちろんですけど、あそこに入るのも売りなので思い切って入りました」

 今季初スタメン、しかも左サイドバックでのプレーは北海道コンサドーレ札幌時代に経験はあるものの、琉球では初めてという。しかし、そうは感じさせないほどスムーズなポジション取りだった。

「拓馬がうまくターンして、僕が外にいることに気づいていたはずなので、うまくヘディングボールを上げたと思うんです。でも、手前に落ちてくるボールだったので、思い切ってシュートを狙いました」

 あの素晴らしいゴールは、そんな判断で生まれたのだった。「前への推進力や裏への動き、長い距離を走ることを全面に出していこう」という意識が結果となって表れたのだ。

 しかし、上原自身は味わった苦々しさのほうを強調する。

「今日は勝たなければいけない試合でしたけど、両サイドバックが鳥養(祐矢)選手と僕で、そこで失点が起きてしまったので、チームとしても個人としても反省点ですし、しっかり立て直さないと上の順位にいけないと思います」

 自身が先制した後、50分に追いつかれ、赤嶺真吾の78分のゴールで突き放したものの、1分後にまたも同点とされる落ち着きのない展開になってしまった。1失点目は鳥養が柴山昌也を倒したPK、2失点目は上原が戻したバックパスをネルミン・ハスキッチにかっさらわれてから最後は黒川淳史に決められたものだった。

「得点は良かったですけど、失点ゼロで抑えなければいけなかった」とディフェンダーとしての反省が色濃く残った。およそ1年8カ月ぶりのフル出場になったが、起用した樋口靖洋監督の評価は、どうだろう。

「攻撃でいい形で出ていくし、高さで相手に脅威を与えました。残りのリーグ戦に向けた大事なヒントになったかなと思います」

 上原は中断前最後の試合で、チームに新しく頼もしい選択肢を提供したようだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE