6月21日に行われた明治安田生命J2リーグ第19節で、アルビレックス新潟は難敵・ブラウブリッツ秋田に挑んだ。ロングボールを多用するタフなスタイルに、早川史哉は堂々と立ち向かった。原点に返って泥臭く戦い抜いた90分は、早川にとってもチームにとっても大きな1勝になった。

上写真=早川史哉は5月5日以来の先発出場にも、体を投げ出して秋田の猛攻を防ぎきった(写真◎J.LEAGUE)

■2021年6月21日 明治安田生命J2リーグ第19節(@ソユスタ/観衆3,013人)
秋田 0-2 新潟
得点:(新)本間至恩、矢村健

「勝てたということが何よりも大きい」

 アルビレックス新潟の守備の要のセンターバック、舞行龍ジェームズが出場停止。ロングボールをどんどん放り込んでくるブラウブリッツ秋田との難しいアウェーゲームで、代わってそのポジションに入ったのは早川史哉だった。

 とはいえ、早川も今季10試合に出場しているから、問題はなかった。小さな不安があるとすれば、リーグ戦では5月5日の大宮アルディージャ戦でフル出場して以降、6月5日のヴァンフォーレ甲府戦で2分、プレーしただけだったことだ。

 だからこそ、強く意識したのは「原点」だった。

「自分たちのスタイルうんぬんの前に、サッカーというものの原点、大事にしなければいけないものがあります。秋田さんはそれを大事にしているので、そこで負けず、上回ることをやったからこそ、勝ち点3が取れたのだと思います」

 前半は新潟のペースで、アディショナルタイムには本間至恩が決めて、いい時間に先制することができた。ところが、後半もさらに押し込むはずが、逆に守備に回る時間が長くなった。そこで「原点」が生きてくる。相手のパワープレーの連続も体を張って耐えて耐え抜き、6試合ぶりの無失点。89分には矢村健が追加点を挙げて、2-0で逃げ切った。

 ロングボールへの対応は、常に向き合い続けてきた自らの課題だった。

「相手の土俵というか強みの部分で良さを出させずに、封じることができたのは、今後の自分自身にも大きなプラスになると思います。この試合を経て、少しずつレベルアップできるチャンスがあると思いましたし、もう一度試合を見返して課題と向き合って、さらにいいプレーができるようにしたい」

 単なる1勝ではない。早川史哉という一人のフットボーラーが描く成長曲線の中で、エポックメイキングな勝利になった。そんな実感が言葉に込められていた。

 もちろん、チームとしてもこの勝利は大きい。0-1で敗れた前節のファジアーノ岡山戦ではオフサイドであるように見えた失点がそのままゴールとして認められ、重くのしかかった。納得しきれない黒星から切り替えるためにも、勝利が強く求められていた。

「勝てたということが何よりも大きいですね。僕たちが上を目指す中で今日のような試合で勝ち点3を手にできたのは、ものすごく大きな意味のある勝利だったのではないかと思います」

 自らの課題に向き合い、フットボールの原点に改めて立ち返った大切な白星。

「このベースをもっと高めることで自分たちのスタイルを高めていけますし、勝ちを手繰り寄せるチャンスが、そのスタイルとプラスして手に入ると思います」

 首位の京都サンガF.C.と2位のジュビロ磐田に勝ち点1差でぴたり。3試合ぶりの勝利で新潟が息を吹き返した。

写真◎J.LEAGUE