6月13日、明治安田生命J2リーグ第18節で首位のアルビレックス新潟が16位のファジアーノ岡山を迎えた。全般的には新潟が試合を支配して押し込んでいたものの、0-0で折り返した後半に岡山が一瞬のスキを突いてゴールを挙げ、この1点を死守して首位から大きな白星をもぎ取った。

上写真=唯一のゴールを決めた上門知樹(14)が拳を握る。古巣対決となった宮崎幾笑(10)のアシストからだった(写真◎J.LEAGUE)

■2021年6月13日 明治安田生命J2リーグ第18節(@デンカS/観衆12,689人)
新潟 0-1 岡山
得点:(岡)上門知樹

「必ずJ1に昇格してみせます」とアルベルト監督

 前へ、前へ。ファジアーノ岡山の有馬賢二監督が植えつけた思想を、選手たちが勇敢にピッチの中で表現して、1-0で金星を奪ってみせた。

 前半は新潟のもの。前線の4人、本間至恩、高木善朗、谷口海斗、鈴木孝司のポジションがランダムに入れ替わることで相手を幻惑しつつ、テンポの良いパス交換と即時奪回で支配するパワーはいつもと変わらなかった。

 12分に左CKからゴールに迫り、14分には右からの高木の折り返しのこぼれ球を島田譲が狙えば、31分には堀米悠斗、高木、本間で左サイドを割ってセンタリングに鈴木がヘディングシュート、36分にも右サイドを突破した高木の折り返しが逆サイドに流れたところを拾い、本間が切り込んでクロス、またも鈴木がヘッドで狙った。2分後には藤原奏哉のペナルティーエリアへのパスを鈴木が触り、こぼれたところを谷口が狙う。

 アウェーの岡山とすれば、この数あるピンチをしのいで、まずは0-0で45分を戦い抜いたのは収穫だった。新潟はこれだけの好機にもゴールが割れないまま。このことが、大きな意味を持ってくる。

 新潟の対戦相手は多くの場合、前半のボール回しで走らされて後半に足が止まるが、岡山は違った。「前へ」の哲学が形になったのが68分のこと。右サイドで喜山康平の縦パスを宮崎幾笑がフリックして裏のスペースへ。抜け出した上門知樹が右足を振り抜いて見事に決めてみせた。

 しかし、上門のポジションがオフサイドにも見えたことで新潟の選手たちは猛抗議。アルベルト監督も試合後、「レフェリーをリスペクトしています」とした上で、「失点につながったシーンは明確にオフサイドだったと思います」と強調。「今日のようなとても明白な誤審に関してはコメントせざるを得ない立場にいる」と話した。

 ここからは、同点のために前線に人数をかけて猛攻を繰り出す新潟、最後は5バックにしてこの1点を守ろうと体を張った岡山、という構図で残りの時間は進むが、結局このまま試合終了。

「当然、自分自身に矢印を向けて批判的に振り返る必要があります。今日は私自身を批判的に振り返りたいと思います。勝ち点を失い、全員悲しみに暮れています。ですから、審判団の責任者にも今日のミスに関してはしっかりと自分自身に矢印を向けて批判的な振り返りをしていただきたい」

 アルベルト監督の憤りは止まらなかった。それでも「必ず乗り越えてJ1に昇格してみせます」ときっぱり。この黒星を逆にステップボードにする意欲を示すことも忘れなかった。

 岡山はアウェーでの激戦を制し、有馬監督も充実の表情だ。

「自分たち何ができるか、強みは何なのかを考えて臆することなく向かってくれた」と選手たちの闘志を称賛。81分の交代策で5バックに移行して守り切ることに成功した。「幅を使われだすのとゴール前の枚数が増えてきたので、幅を消しながらボールにプレスにかけようというのが一つ、長いボールやクロスに対して、出しどころとなるボールにいくところと中で競ってこぼれ球を拾うために5バックにしました」と、選手たちが逃げ切り戦略をしっかり実行したことを喜んだ。

写真◎J.LEAGUE