5月30日の明治安田生命J2リーグ第16節で大きな注目を集めたのが、2位アルビレックス新潟と3位FC琉球の上位決戦。アウェーの琉球が先制しながら直後に新潟が同点とし、一進一退となるが、後半に押し込んだ新潟が逆転。京都サンガF.C.がヴァンフォーレ甲府に引き分けたため、勝ち点36で並んで得失点差で上回り、首位に返り咲いた。

上写真=逆転ゴールを決めた谷口海斗(7)を鈴木孝司が祝福。新潟は4試合ぶりの勝利で連敗を2で止めて、首位を奪回した(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月30日 明治安田生命J2リーグ第16節(@デンカS/観衆14,759人)
新潟 2-1 琉球
得点:(新)高木善朗、谷口海斗
   (琉)池田廉

「サッカーの面白さを感じて新潟と試合ができました」

 基本的な選手の配置は4-2-3-1で同じ。最前線にポストプレーに秀でるFWを置き、高い技術を持つMFを散りばめて、コンビネーションで崩していく。2位のアルビレックス新潟と3位のFC琉球は、とてもよく似たチームだ。

 試合展開もとても似通っていた。28分に琉球が右サイドの田中恵太の鋭く低いセンタリングに池田廉がワンタッチでゴール左に流し込む、目のさめるような先制ゴールを決めてみせた。その1分後には新潟が、堀米悠斗の左からのクロスに高木善朗が落ち際に右足をうまく合わせてゴール右に流し込む同点ゴールを見舞った。

 だからこそ、勝負の分かれ目になるのは個々の差になるはずだった。その点で、「J2でボールの動かし方が恐らく新潟が一番うまい」と琉球の樋口靖洋監督が認めたように、ボールと選手の動きがきれいに連動した新潟に、逆転ゴールは転がり込んだ。

 67分、左サイドバックの堀米悠斗が中央に立ってボールを受けると、左斜め前の高木へ。ワンタッチでさらにペナルティーエリア内に流し込んだスピードアップのパスにボランチの高宇洋が飛び込んでいて、鈴木孝司をポストにしてさらに進入してシュート、当たりそこねたがこぼれたところには右サイドハーフの谷口海斗がいて落ち着いて流し込んだ。それぞれがオリジナルのポジションから立ち位置を動かしながらも、連なるようにしてスピードに乗って仕掛けた中央突破に、新潟らしさが表れていた。

 琉球は得意のサイドからのクロスを自信を持って放り込みつつ、パワープレーも駆使して迫った終盤の攻撃は迫力があったが、1点が遠かった。このまま新潟が逃げ切って、京都サンガF.C.がヴァンフォーレ甲府に0-0で引き分けたことで勝ち点36で並び、得失点差で上回って首位を奪い返した。

 逆転勝利で連敗を2で止めた上に、4試合ぶりの勝利で首位返り咲きと、新潟にとっては大きな意味のある勝利になった。「長いシーズンではネガティブな流れのときがありますし、打開するには苦しむ必要があります。今日は先制点を入れられた中、難しく苦しい時間を乗り越えていい流れをつかめてうれしいです」と振り返ったのは、アルベルト監督。相手に押し込まれる時間帯を耐えてはねのけて逆転勝利をもぎ取った試合の流れを、連敗していたシーズンそのものの流れにも重ね合わせて、二重の意味で苦境を脱出したことを喜んだ。

 琉球の樋口靖洋監督は敗れはしたものの、「本当に試合を見ていてサッカーの面白さを感じて新潟と試合ができました」と手応えを強調した。「ゲームの内容はネガティブになる必要はないと思います。僕たちの時間も作りましたし、相手の攻撃への対応も共有できて、収穫のあるゲームでした」と振り返り、「お互いにボールを大事にして相手のスキを突きながらできて、このサッカーを追求したいと改めて思いました」と確かな自信を持ち帰ることになった。

写真◎J.LEAGUE