大宮がおかしい――。5シーズンぶりのJ1昇格を目指しながら、まったく結果の出ていない状態が続いている。4チームがJ3へ自動降格するという厳しいレギュレーションの中、一時は最下位に沈みながらもクラブは全く動こうとしていないように見える。今、大宮はどうしようとしているのか。強化部門の最高責任者である西脇徹也フットボール本部長に話を聞いた。

「いま、別の監督を招へいする方がリスク」

今季から指揮を執る岩瀬健監督。ここまで苦しい戦いを強いられている(写真◎J.LEAGUE)

 通常のシーズン序盤であればポジティブに受け止められる向上の兆しとも取れるが、置かれた状況としてはゆっくりと成長を待っているわけにもいかない。他クラブのように『特効薬』を使うつもりはないのか、ずばり聞いてみた。

「岩瀬を代えると考えたことはない」

「(現体制で)やります」

 返答は極めて明確だった。

「こうすれば勝てたんじゃないか、あと少しだったのに、という試合がけっこうあったと思う。そのあと少しを何とか変えたい。変えられれば勝ち点が出てくると思っています。そこで別の監督を招へいしてしまったら、そのほうがリスクが高いと僕は思います。また一からスタートで、それでうまくいかなかったらそれこそきついですよね。チームとしての方向性をつくるための岩瀬でもあるし、でも、方向性をつくりながらでも勝ちは拾わなきゃいけない」

 クラブ史上最大の難局にあっても、岩瀬監督に対する信頼は揺るぎないようだが、それでも不安は残る。例えば選手交代などの采配。ここまで7敗のうち3敗は逆転負け、5分けのうち2分けは先制しながら追いつかれたもの。もしこれらの試合を拾えていれば、まったく違う景色が見えていた。監督としての経験の浅さがマネジメントにも垣間見える。

「采配については結果としてそうですね。そこは経験のあるコーチもいるので、カバーできる部分はあると思います。チームづくりについても、予想以上に時間がかかっていると思っていて、それについても経験の浅さが影響している部分もあると思います。大宮としても、監督としての経験がない人をシーズンスタートから呼ぶのは初めてです。クラブにとってもトライだと思っているからこそ、ここは乗り越えるべきところだと思います」

 大いなるトライか、はたまた無謀なギャンブルか。それは結果で判断されるだろう。勝ち点などの明確なラインは提示しなかったものの、クラブはシーズン折り返し時点を期限として区切った。そこで何が得られているのか、失ったものはないか。クラブにとって何が最良の判断なのか、関わるすべての人が真剣に向き合い、決断しなければならない。

西脇徹也フットボール本部長(写真提供◎1998 N.O.ARDIJA)