上写真=7試合ぶりにピッチに帰ってきた鈴木孝司。初黒星を喫した中で明るい話題だ(写真◎J.LEAGUE)
■2021年5月16日 明治安田生命J2リーグ第14節(@Gスタ/観衆3,430人)
町田 2-1 新潟
得点:(町)三鬼海、太田修介
(新)堀米悠斗
「どちらかを決めないとダメ」
「点が入る日もあれば、今日のようになかなかボールがゴールに入ってくれない日もあるものです」
アルビレックス新潟のアルベルト監督は、今季初めての黒星をFC町田ゼルビアから突きつけられたあと、サッカーの真理をそう話した。
開始36秒と11分に失点。不運もあったが、厳しい立ち上がりになった。後半には何とか持ち直して猛攻、62分に堀米悠斗が決めて1点を返し、なおも攻め続けるが、さらなるゴールは生まれなかった。
明るい話題はある。FW鈴木孝司の復帰だ。7試合ぶりの出場だった。右足太ももを痛めて、およそ5週間、ピッチから離れていた。古巣を相手に待望のカムバックだった。だが、負けてしまった。
「前半のスタートの入りがチームとして悪くて、その流れで2失点してしまい、それが最終的に結果に響いたと思います」
鈴木としては久々の試合にしっかり入りながら、イーブンな状態でゴールに向かいたかったところだろう。しかし2点のリードを奪った相手に余裕を持たれてしまった。
「いつも通りプレーすることを心がけました。前半はなかなかボールに絡むことができなかったんですけど、後半は(右サイドハーフの谷口)海斗と入れ替わったり、より相手のプレスが甘くなったギャップでもらっていくことができたので、それは良かったです。でも、もう少しゴール前での人数や自分の入り方をしっかりしたり、シュートは前後半1本ずつ打ったんですけど、どちらかを決めないとダメだなと思いました」
特に前半のフィニッシュは豪快だった。44分、右サイドに回っていた堀米のパスを受けて突破した高木善朗のクロスを、後ろに戻りながら右足をコンパクトに振ってボレーでゴール左を狙っていった。しかし、GKのファインセーブにあってしまう。
「もう少し裏に抜けて起点になることもできれば」
前半は特に、町田のボールへの出足の鋭さもあって、攻撃にノッキングを起こしていた。パスがうまくつながらない。いつもなら的確なポジション取りができている選手同士の距離が、この日は遠い。
「自分たちがボールを持っているときに、相手のプレスに誘導されながらうまくはめられた感じがあって、それによって各々がポジショニングを考えながらやるうちにみんな下がってもらうことが多くなったのかなと思います。自分は間でもらってテンポを作ろうと思いましたが、もう少し裏に抜けて起点になることもできればよかったと思います」
その「間で受けて」が成功したアクションが、堀米のゴールに至る流れの中にあった。右サイドで舞行龍ジェームズと短いパス交換を連続させたあとに、本間至恩が中央に向けて斜めのくさびを差し込んだ。受け手の鈴木はしかし、スルーしてしまう。だが、この一瞬の判断が輝きを放った。
「至恩からのボールを僕がもらう前に首を振って周りを見て、ボールのコース上に海斗がいたのが分かっていて、至恩のボールの質も弱くなかったので、スルーでいけるなと自分で判断してやりました」
認知と判断のレベルの高さを物語るワンシーン。これを谷口が受けて高木善朗に戻し、テクニカルなループパスを右前に入れると、走り込んだ藤原奏哉が胸トラップから中央へ。これは左に流れたが、堀米が走り込んで狭いコースをズバリと射抜いた。
復帰戦が初黒星となったのは悔しいが、まずは帰ってきたことが何よりだ。アルベルト監督も「試合勘は失っている部分があるので、試合を重ねるごとにいい感覚を取り戻してほしい」と、これからに期待する。誰もが同じ気持ちだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE