上写真=森谷賢太郎は後半から登場し、技術で時間をコントロールして逆襲の基盤を作った(写真◎J.LEAGUE)
■2021年4月24日 明治安田生命J2リーグ第10節(@ニンスタ/観衆1,491人)
愛媛 0-2 新潟
得点:(新)谷口海斗、本間至恩
「個人的には非常にいいゲームだったと思うんです」
逆転する、の強い気持ちで森谷賢太郎は後半のピッチへと足を踏み入れた。
J2第10節で愛媛FCが迎えたのはアルビレックス新潟。ここまでの9試合で7勝2分けと負けなしの首位チームだ。12分と早々に先制され、その後もチャンスをつくられたのだが、そこからスコアを動かさなかったことが、愛媛の後半の逆襲につながっていく。
もう一つが、森谷の存在だ。ベンチスタートで前半は見守る立場だったが、ハーフタイムに声がかかり、「勝つために試合に臨みましたし、逆転するつもりで入りました」と後半開始から登場した。すると、前半の劣勢を覆すように愛媛がボールを回して押し込んでいった。森谷がボールをしっかりと足元に収めて落ち着きを注入したことで、混乱気味だったチーム全員のポジショニングが、攻守ともに整ったのだ。
「ゴールを取らなければいけない状況だったので、よりゴールに近い位置で直結するようなプレーを心がけました」
森谷が絡むことで周りが生き生きと動き始めて、左右に幅を取って新潟の守備をかいくぐることができるようになっていった。
でも、結果から言えば、それでもゴールは奪えなかった。決めきるためにいま必要なのは、森谷の言葉を借りれば「繊細」と「大胆」だという。
「ラスト3分の1のプレーはより繊細にしなければいけないと思います。そこは僕の特徴でもあるので、一つのパス、一つのプレーで決定的な場面をつくれるようにしていきたい。技術的な部分もそうですけど、見る目というか、どこがフリーで空いていてチャンスになるのかを研ぎ澄ます必要があると思いました」
でも、それだけで勝てるとは限らないことも知っている。
「後半に入ってチャンスになる手前というか、ボールを保持してからどう崩せるかのところで、決定的チャンスをつくれませんでした。ラスト3分の1で繊細なプレーが求められるのは確かですが、でもどこかで大胆なプレーをしないとつながらないんです。そのバランスが難しさでもありサッカーの楽しさでもあります。これからも試合に出ることがあれば最良の判断、ゴールに直結するプレーを選択したいですし、今日はそれができなかったということです」
一つ、誇らしいのは、敗れたとはいえ、しっかりとサッカーをして渡り合えたという手応えがあることだ。
「個人的には非常にいいゲームだったと思うんです。相手の良さも出ていたし、僕たちの良さも出せました」
だから、新潟の質の高いプレーに触れて、ハートに火がついた。
「どこが勝ちきれなかったのかを振り返ってみると、したたかさというか、勝利のためにプレーを選択すること、状況を見て選択するというしたたかさは新潟の方がありました。流れを見て、いまは落ち着かせるべき、とか、カウンター狙うべきというのは新潟の方がいい選択をしていたと思います」
連勝は2で途切れた。だが、自分たちの戦いが間違っているわけではないし、欠けているものも明白に見えるようになった、という感触を得た後半の45分だった。