上写真=退場者が出たあとの88分、裏に抜け出した本間至恩が決めて勝利にぐっと近づいた(写真◎J.LEAGUE)
■2021年4月24日 明治安田生命J2リーグ第10節(@ニンスタ/観衆1,491人)
愛媛 0-2 新潟
得点:(新)谷口海斗、本間至恩
「角度はなかったけどうまく入ってよかった」
前半に決められなかった自らの失敗を取り返すための、そして悔しい思いをした後輩のための一撃だった。
J2第10節で愛媛FCと戦った首位のアルビレックス新潟は、前半から快調だった。愛媛のプレッシャーが厳しくないと見るや、キックオフから得意のパスワークで4-5-1のブロックの間にボールを動かして、何度もチャンスをつくった。12分には谷口海斗の移籍後初ゴールも飛び出して、いつ追加点が生まれてもおかしくないような内容だった。
しかし、前半は1-0からスコアは動かず。
決定的なチャンスを何度も逃したのが原因だ。左サイドハーフとして相変わらずキレのあるドリブルを繰り返した本間至恩も、その一人だろう。例えば19分には右サイドを崩して星雄次の折り返しを受けて狙うがDFにブロックされたし、45+1分には一人で2人の間を抜け出すように突破してからカットイン、3人を横に振り切ってあとは決めるだけ、と見せかけて右の星に渡したが、星はシュートを外してしまう。1分後にはまたも右サイドを割った星のセンタリングを中央で受けるが、これも相手に引っかかってしまう…。
それでも、結果を残したのは成長だ。88分、千葉和彦のロングパスで抜け出して、相手より先に巧みにボールを持ち出して置き去りにすると、そのままゴールに向かってボールを置いてから右足を振り抜いた。これで2-0として、勝利をより確実なものにした。
「千葉さんが割り切ってロングボールを送ってくれて、いい形で相手より先に触ることができて抜け出せました。シュートは前半に打つ機会が何本もあったのにパスをしてしまったので、あそこは決めるつもりで、角度はなかったけどうまく入ってよかったです」
前半の自分への後悔を振りほどき、汚名を返上する一発になった。
このゴールの4分前、途中交代で入っていた三戸舜介が2度目の警告を受けて退場処分となっていた。1人少ない中で、前がかりになってきた愛媛の勢いを消すゴールになったことでも価値がある。
だが、それ以上に三戸を救うためのゴールだった。
「残ったメンバーが助けてあげるのは当たり前」
「自分も何回か退場したことがあって、そのときにチームに助けられた分、自分も三戸ちゃんを助けてあげようと、自分の番が来たかなと思いました。それでゴールを入れることができたのは良かったです」
今季は第2節のV・ファーレン長崎戦で自分も2度の警告を受けて退場し、試合は1-0で勝ったものの仲間を苦しめた悔いが残った。だから三戸の気持ちがよく分かった。
「三戸ちゃんもレッドカードをもらいたくてやっているわけではないし、チームコンセプトとして激しくプレッシャーをかけて奪い取る守備を意識しているからこそだと、みんな分かっています。残ったメンバーが助けてあげるのは当たり前です。だから、勝ってよかった」
試合後に三戸は仲間からだいぶからかわれたようだ。
「相当いじられてましたけど、監督も戦う気持ちが出ていて戦わない選手より戦う選手がいいと言っていました。復帰したときにまたいいプレーしてくれればと思います」
「退場の先輩」としてのアドバイスだ。次にピッチに立ったときに、活躍すればいい。苦しむ後輩には、同じ経験を乗り越えた本間が決めたこのゴールが最良の薬になるはずだ。
写真◎J.LEAGUE