明治安田生命J2リーグ第5節で首位のアルビレックス新潟が東京ヴェルディを迎えた。この対戦、J1とJ2通算で12試合戦って新潟が一度も勝っていなかった。しかし、90分間、圧倒して計7ゴールを決めた新潟が初勝利を収めた。

上写真=高木善朗が古巣相手にハットトリック。最後はPKを力強く蹴り込んだ(写真◎J.LEAGUE)

■2021年3月27日 明治安田生命J2リーグ第5節(@デンカS/観衆:10,968人)
新潟 7-0 東京V
得点:(新)高木善朗3、本間至恩、島田譲、鈴木孝司、三戸舜介

「ボールを受けることを怖がっていた」と永井監督

 ヴェルディに勝った! 歴史を変えた! しかも7-0! 待ちに待った東京ヴェルディ相手の初勝利だ。

 アルビレックス新潟はこれまで東京ヴェルディと戦った12試合で、J1では3分け3敗、J2では4分け2敗で一度も勝っていなかった。苦手、という言葉では表現しきれないほどの鬼門だった。それが7-0というスコアをも超えるほどの充実の内容で、これまでの12試合分のうっぷんを晴らすかのような完勝になった。

 攻撃的な意思を強く持つチーム同士の対戦は、昨季も攻め合いとなって見応え十分だった。今季もその思想を色濃く反映させたゲームになったが、完成度で新潟が何枚も上手だった。

 ゴールショーはまず強烈な「恩返し弾」で始まった。17分、ドリブルで運んだ本間至恩からペナルティーエリア内の左前に流れた高木善朗に送ると左足シュート、スライディングしてきたDFに当たってゴールに転がり込んだ。続けて22分にも本間が中央でドリブル、左へ流して堀米悠斗がクロスを送ると、中央に走り込んでいた高木がヘッドでうまくGKマテウスの逆を突いてゴール左に送り込んだ。東京Vはアカデミーの頃から学んだ高木の古巣。育ったクラブへの2ゴールで圧倒的優位に導いた。

 後半の新潟はさらにパワーアップ。いきなり47分に中盤でプレスを掛けて奪い、最後は右サイドの藤原奏哉のクロスから逆サイドで本間がダイレクトシュート、これもDFに当たってゴールに転がり込むと、5分後にもたたみかける。またも中盤のプレスで奪ってから、左からの高木のクロスのこぼれ球を島田譲が得意の左足で豪快に蹴り込んでみせた。

 すると72分にはロングカウンターを発動、鈴木孝司のフリックから高木が素晴らしいターンで前を向いてそのまま一人旅、DF2人を引きつけておいて左に優しく流すと、並走してきた鈴木が右足で軽やかに蹴り込んだ。さらに82分には高木がハットトリックを達成。自らのシュートの瞬間に後ろから相手の足が当たってPKを獲得し、自らゴール左に力強く蹴り込んだ。

 これでもまだ終わらない。90+4分には相手のミスから流れたボールを拾った三戸舜介がそのまま持ち込み、ペナルティーエリア手前から左足の強烈なミドルシュートを突き刺して、歴史的勝利を、そして開幕5連勝を締めくくった。

 新潟は最後の最後まで強靭なプレスのパワーを緩めることなく、回収に次ぐ回収で東京Vにほとんど何もさせなかった。守備は攻撃であり、攻撃は守備であるという理想を具現化した90分になった。

 それでも、アルベルト監督は幸運に恵まれたとして、こう引き締めた。

「重要なのは、われわれはまだ何も成し遂げていないということです。5試合しか戦っていないですし、37試合残っています。道のりはまだまだ残されています。いい時期もあるだろうし、難しくつらい時期も待ち受けていると思います」

 思わぬ大敗を喫した東京Vの永井秀樹監督は「大量失点しない戦い方もあったかもしれないが、最後まで逆転しに攻撃して点を取りに行く選択をしました」と強調。「ボールの循環について時間をかけてやって来ましたが、選手たちがボールを受けることを怖がっていたように感じました。そこは怖がらずに受ける、そして渡してまた受ける、そうやって循環させてハーフウェーライン越えることをもう一度、自信を持ってやっていかなければならないと感じました」と振り返った。