ルーキーイヤーはベンチ入りすらできなかった。アカデミー育ちのMF山田楓喜はその「恥ずかしさ」を胸に2年目の活躍を誓う。練習試合では2戦連発と猛アピール。自慢に左足と恐れを捨てたメンタルで、虎視眈々と結果を求めていく。

上写真=山田楓喜の愛くるしい笑顔にはまだあどけなさがのぞくが、ボールを持てば相手の懐をえぐるパスをクールに繰り出す(写真提供◎京都サンガF.C.)

「24時間、サッカーのことを考えて」

 京都サンガF.C.のアカデミー出身のMF山田楓喜が、プロ2年目に「かっこいい」ゴールを決めてみせる。

 ルーキーイヤーの2020年はベンチ入りすらなし。プロの壁に直面した。一方で、同期の川崎颯太は16試合に、谷内田哲平は23試合に出場して、上々の1年目を過ごしていた。

「ライバル意識というか、去年のことは悔しいのは当たり前ですけど、なんていうのか、2人を見ていて恥ずかしいと思う自分がいました。その気持ちは忘れずに、今年は同期みんなで切磋琢磨して、自分のプレーを見せていきたいと思います」

 悔しい、よりも、恥ずかしい、が先に立つ。悔しさを感じる以前の段階に自分は留まっていることを感じていた。だが、それを逆手に取ってやる。

「去年、僕は出てなくて、今年出て一番に点を取ったらかっこいいなと思うんで。今年はしっかり試合に出て、結果というものを一番に取れたらいいなと思っています」

 川崎も谷内田も、昨季はノーゴール。2021年に山田が2人よりも先に取れば、同期で最初の得点者だと胸を張れる。それが新しいモチベーションだ。

 さっそく、有言実行へのアプローチは進んでいる。沖縄キャンプでは、沖縄SV、北海道コンサドーレ札幌との練習試合で連続ゴールを挙げている。

「結果以外の部分も大事ですけど、まずは結果を出すということを頭に入れて試合に入って、2点を取れたので良かったと思います」

 自慢の左足と広い視野で、味方が受けたあとにプレーしやすい優しいボールを滑り込ませるのが得意のスタイル。その上で、ゴーラーとしての能力を目覚めさせている。その理由は「仲間を信じてゴール前に入って行くというのが、一番ゴールに近づけている思いかなと」。つまり、心が突き動かされて足が動いているというのだ。

 遠慮を捨てて自己表現できているのは、チョウ・キジェ監督との出会いが大きい。選手のハートに火を点ける新監督の言葉が、真っ直ぐに響いている。

「ミスしてもいいからどんどん受けろ、ミスを恐れずに何回でも受けろ、と言われて、ミスしても向かっていく姿勢が大事なんだなと思いました」

「それで受ける回数が増えたと思います。呼び込む数が増えました」

 どんどんとボールに関与していけば、それだけゴールに近づくチャンスも増えていく。単純な理屈だが、行動が伴うようになったのは、恐れを捨てることができたからだった。

「チームとしてやることはっきりしています。単純ですけど、取られたら取り返すとか、仲間のために走るとかそういう部分。ボールを持つところでは、自分の特徴である独特な左足のスルーパスやシュートをもっともっと出していきたいと思います。いまも見せられているとは思いますけど、もっともっとチャレンジしてもっともっと出していきたい」

 もっともっと、の意欲が止まらない。

「もっともっと足りないところを追求して、24時間、サッカーのことを考えて過ごしたいと思います」

 かっこいい背番号27がピッチで輝く日も近い。