ジェフユナイテッド千葉のGK新井章太が今季の最終節となるギラヴァンツ北九州戦を前に取材に応じた。今季の戦いを振り返るとともに、今季限りの引退を発表した川崎フロンターレ時代からの先輩、田坂祐介を勝利で送り出すと誓った。

上写真=チームを最後尾から支え続けた新井章太(写真◎Getty Images)

41試合終了時点で41試合に出場

 今季、チームでは最も試合に出場した。シーズン序盤はローテーション制を採用していたが、ゴールマウスに立つ新井だけは不動の存在だった。だからこそ分かる、チームの課題と成長がある。

「普段のところからみんなの共通意識として、試合のためにどう練習していくのか。もっともっとチームとして個人として高めていかないといけないなと感じました。本当に細かいところ。チーム全体として意識を高めていけたらなという反省はあります」

 ゲームの終わらせ方に問題を抱え、勝てる試合を引き分けたり、引き分けられるところで、負けてしまったり。不安定な戦いぶりで、J1昇格を目指したチームは低迷することになった。

「戦う意識に関してはシーズン通して言い続けてきたんですけど、最後の方になってしっかり行ける選手が出てきたし、自分から発信してやってくれる選手も出てきた。自分が言ったことがちょっとは伝わり始めたのかなというのはありますが、最後は自分自身でやらないと。もっともっと自分たちからやっていけたらなと思います」

 勝利に見放されている時期も、新井は積極的に声を出してチームを鼓舞してきた。シーズンの終盤になって意識が変わり始めているという実感がある。ただ、まだまだ物足りない。チームとしても、個人としても。

「満足はしていません。自分がしっかり止めていれば引き分けられた試合もあります。シーズンの最初から最後まで出られたのは初めてで、5連戦が何回も続くことも初めてでしたが、もっと自分のスキルを高めることができたという思いもあります。もうちょっと貢献できたはず、というのが本音です」

 紆余曲折あったシーズンもついに最終節を迎える。相手は北九州。前回、アウェーで対戦した際には2-3で競り負けている(第15節・8月29日)。

「自分たちの守備の仕方で、はっきりやるところは、はっきりやって、余裕があるときはリスク管理しながら攻撃に出ていく。やっぱりそういうところを一つ一つ丁寧にやることが大切。相手の攻撃は勢いがあって、誰でも出てくるようなイメージもあるので、自分たちで試合中に考えながら、コミュニケーションを取って一つ一つ丁寧にやっていきたい」

 最終節を『絶対に』勝利で飾りたい理由がほかにもある。「タッピー」と慕う川崎フロンターレ時代からの先輩、田坂祐介が今季限りで現役を引退すると発表したからだ。

「前のチームから一緒にやってきて、タッピーがいなかったらなかなかこのジェフというチームに入りにくかったと今でも思います。本当に川崎時代から慕っていた先輩なので、すごい感謝していますし、お兄ちゃん的な存在なので。タッピーのためにも最後勝って、送り出せるように、頑張りたいと思います」

 一番の思い出を聞いた。

「そうですねえ。僕もタッピーも(川崎F時代の)J1連覇に貢献できたかといったら、まあ自分はそうなんですけど、あまり力になれなかった、という悔しい気持ちも大きかったので、タッピーもそうなのかなというのは思いますけど。いい思い出もありますし、そうじゃない思い出も。一番の思い出は、僕が脳震盪になったときに、『これ、何の試合』と聞いたこと(2016年9月25日の横浜F・マリノス戦)。タッピーと僕の間で、今でも冗談ながら話すので。。思い出せば色々ありますけど、やっぱり先輩がいなくなるのは寂しいものですね、毎年そうですけど」

 ファン・サポーター、そして田坂、さらにこの取材後に現役引退を発表した佐藤寿人や今季でチームを去る選手たちと勝利の喜びを分かち合って、2020年シーズンを締めくくるーー。新井章太は強い思いを胸に抱いて試合に臨む。