上写真＝4度目の昇格に笑顔が弾ける。城後寿の思いもひとしおだ（写真◎J.LEAGUE）
「強がりかもしれないけれど」
「ミスター・アビスパ」城後寿は、まだまだ負けるつもりはない。
「今季は一度も休むことなく、常にトレーニングに参加していましたし、コンディションのところでも問題なくプレーできていました。競争が激しかったので、自分の力不足でメンバーに入れたり入れなかったりで。また新たに今シーズンの出来を見つめ直して、まだまだやれると思っています。J1でしっかり暴れられるように準備は始まっていると思うので、今日からいい準備をしたい」
34歳、福岡一筋の背番号10は、いまだからこそ燃えたぎる。
今季は第41節までに24試合に出場しているものの、先発は6試合。交代で出場できても短い時間が多く、トータルでは675分しかピッチに立っていない。ゴールは1。
「この年齢になってきて、自分のストロングポイントやウイークポイントは自分で分かっているので、自分の得意なプレーがどれだけピッチで出せるかというところを僕自身、楽しみにしていますし、ファン・サポーターの皆さんで僕のプレーを楽しみにしている方も少しはいると思うので（笑）、そういう方々に城後は元気だな、まだまだやれるな、という姿を見せたいんです。いつも心がけていることですが、皆さんに元気や勇気をたくさん与えられるように、まだまだ頑張りたいと思います」
J2第41節の愛媛FC戦で勝って、V・ファーレン長崎がヴァンフォーレ甲府に引き分けたために昇格が決まった。その瞬間、城後はピッチに立っていた。
「ここ数試合、ベンチにも入れない中、こういったチャンスが巡ってきて、昇格を決める試合に立たせてもらったのはうれしく思います。今シーズンは苦しい思いをしましたけど、それを忘れられるぐらいの喜びを味わえました。でも、もう昇格という喜びを味わうのは最後にして、今度はJ1で上の方の順位を目指してやりたいと思いますし、アビスパ福岡というチームをもっとたくさんの人に知ってもらいたいです。福岡には（プロ野球の）ソフトバンクだけじゃないというところを来年以降は見せたいと思います。ソフトバンクに追いつけ追い越せじゃないですけど、比べるのは良くないけど僕たちもいるところをアピールしていきたい」
城後自身は昇格の喜びを味わうのは、実に4度目だ。上がっても落ちてしまうからなのだが、その負のサイクルを止める使命が城後にはある。
「昇格というのはうれしいものでもありますが、今シーズンはコロナ禍の中でどんなシーズンか不安で始まって、医療従事者の方をはじめ僕たちの見えないところで戦ってくれた方々のおかげで僕たちがピッチでのびのびプレーすることができたので、そういう方々にまず感謝しなければいけないし、イレギュラーな日程で連戦が続く中、メディカルスタッフや裏方のスタッフが僕たちが休みの間もグラウンドに出てきて用具やユニフォームの片付けをしてくれたり、選手のケアだったり、選手のために働いてくれた方々のおかげで戦ってくることができました。だから、過去の3度の昇格と比べてみても、過去にないいろいろな感情が、昇格を決めた瞬間にあふれてきました」
広く目を配り、心を届ける城後らしい言葉だ。福岡愛。チーム愛。クラブ愛。人間愛。
「今回、上がれたことは非常に良かったですけど、これで満足するとこれまでと同じ結果になると思います。チームの、クラブの目標はJ1定着だと思っているので、もっともっと上を目指しています。その手助けができたらなと思っています」
手助け、だけでは物足りないと周囲の誰もが思っているだろう。
「チームの目標である昇格は達成できました。チームとしてはできましたが、個人的なところでは試合に関われないときもありましたし、スタメンで出る選手がいればベンチ入りする選手もいれば、ベンチにも入れない選手もいるわけです。その中で年齢も重ねてきてベテランと言われる域に入ってきて、どういう立ち居振る舞い、行動をしなければいけないか自分なりに考えて、ピッチ内でもピッチ外でも若い選手に変な影響を与えないように心がけていました。僕自身、周りに与える影響は大きいと思っていたので、やれることを探しながら、試合に出れないときもやって来たつもりです。プロである以上、結果がですべてですが、それ以外のところでもうまく若手を引っ張れるように、背中で引っ張れるように、できる限りのことはやれたと思います。いろいろな角度から自分を見ることもできたので、強がりかもしれないけれど僕にとってすごく良いシーズンだったと思います」
アビスパ福岡に、城後寿あり。