明治安田生命J2リーグ第41節で2位以内を確定させ、J1昇格を決めたアビスパ福岡。さまざまな個性がきらめいたチームで、インパクト十分なのが遠野大弥だ。プロ1年目でチームトップの11ゴールを決めて、攻撃の主役になっている。

「解き放たれたという感じですね」

 遠野大弥、充実の3戦連続弾だ!

 勝ち続ければ昇格が決まるという状況の中、迎えた第41節でアビスパ福岡は愛媛FCとアウェーで対戦。19分にCKから山岸祐也のゴールで先制してリズムに乗ると、前半アディショナルタイムにこの男が輝いた。

 GKセランテスがロングキック、FWフアンマ・デルガドがヘッドでさらに前線に送り込んだ。これを受けた遠野は右足でボールをつついて浮かし、寄せてきたDFの頭上を抜く「シャペウ」(ポルトガル語で帽子の意味)で逆を取り、体で前に運んでから落ちてきたボールがショートバウンドしたところで左足を振り抜くと、ゴール右に飛び込んだ。

「シゲくん(重廣卓也)が後ろから、『振れえっ!』って大きな声を出してくれて、それで思い切り振っていいコースに行ってよかったです」

 体幹がまったくぐらつかず、完全にボールと体をコントロールした美しい動作からのゴール。J1への道をはっきりと照らす追加点は、自身の今季11点目になった。

 これで今季初めて、ということはつまり、プロになって初めての3試合連続ゴールだ。そして、このまま2-0で試合を締め、V・ファーレン長崎がヴァンフォーレ甲府に1-1で引き分けたため、J1昇格を決めた。

「本当に特別な1日になりましたし、初めて昇格という素晴らしい場面に立ち会えて、これを超えるものはないですね」

 過去最大級の喜びだ。

「長崎さんもついてくる中でいい緊張感だったんですけど、解き放たれたという感じですね」

 JFLのHonda FCから川崎フロンターレに移籍し、そのままアビスパ福岡に期限付き移籍してきたルーキー。いきなり開幕からレギュラーとしての地位を確立し、フアンマの周りを快活に動き回り、気づけば11ゴールはチームトップだ。シーズンを通してラッキーボーイであり続けた、と言ったら失礼だろうか。ただ、自己評価は辛めだ。

「目標に掲げている二桁に乗ったのはうれしく思いますけど、40試合出ている中で11得点は少ない方だと思います。アシストもまだ3で、味方にシュートを打たせるパスだったり、動きを生かせるパスを出せていないのは、まだまだ反省する点があると思いました」

 もちろん悩みもあった。

「もっと決定力上げないといけないと思いました。ジュビロ戦から金沢戦まであいてしまって、決めきれるチャンスはいっぱいあったのに思い切りの良さをなかなか見せられていなかったです。自分の長所ってなんだろうと考えたときに、シュートの意識の高さやドリブルだと思って、そこを見つめ直しました」

 11月10日の第30節ジュビロ磐田戦で決めたあと、12月6日の第39節のツエーゲン金沢戦でまた決めるまでは確かに8試合ノーゴール。しかし、吹っ切れてからは3試合連発だ。そして、その思い切りの良さは、激しい守備という土台があってこそ出せるのだと分かっている。

「シゲさん(長谷部茂利監督)が掲げているサッカーにどれだけ貢献できるのかを毎試合、考えていますし、監督が僕を使ってくれている分、仕事をしないといけないというのが僕たちのやり方なので、ブレずにアグレッシブさを出してサッカーをしていました」

 チームのために守備をして、そこに思い切りの良さという個性を散りばめて果敢に足を振る。その意識やプレーは、サッカーを楽しむ少年少女たちにこそ見てもらいたいものだった。

「ここに来てよかったと思いました。(初めてのJ1では)楽しさもあると思うんですけど、どこまでできるか試したいです」

 ラッキーボーイのその先へ。遠野大弥はJ1でもその存在感を示すはずだ。