上写真=垣田裕暉(左)が渡井理己とともにこの笑顔。自らのゴールによる勝利でJ1昇格をもぎ取った(写真◎J.LEAGUE)
「やらなければいけないことはたくさんある」
エースがエースらしい仕事をするチームは、それは強いだろう。徳島ヴォルティスがJ1昇格を果たすその道を、垣田裕暉が先頭に立って引っ張っていった。
ここまでの41試合で全試合に出場している選手がチームに3人いて、キャプテンの岩尾憲、左サイドからドリブルで切り裂く西谷和希、そして垣田だ。J2第41節の大宮アルディージャ戦では、21分に浜下瑛の右からのセンタリングにヘッドで合わせて1-0の勝利の立役者になった。J1昇格に王手をかけながら、2試合続けて足踏みしていたチームを自らのゴールで再び突き動かしたのだから、やはりエースは頼もしい。
「ゴールシーンは、いつもみんながいいボール上げてくれるので、クロスに対しては決めないと、という気持ちで入って、決めてよかったです」
「いいボール上がってきて、ちょっと弱いボールだったのでしっかり合わせました」
優しめのボールに対してしっかりインパクトして、ゴール右に送り込んだ貴重な一発。このあとにチャンスそのものもそれほど多くはなく、大宮の逆襲もあって徳島としては比較的静かな90分になっただけに、決めるべきところで決めたゴールの価値は大きい。
「1年間やって来て、積み重ねてきたものが出せて昇格できました。でもまだ終わりじゃなくて、J1挑戦のキップを得ただけで、通過点です。やらなければいけないことはたくさんあるし、ここからJ1の舞台で戦わなければいけないので、満足しないでやっていきたいです。苦しいときもありましたけど、今日は自分の1点で勝ててうれしかった」
鹿島アントラーズのアカデミー育ちで、ツエーゲン金沢の3年を経て、今季、鹿島からの期限付き移籍で徳島へ。そこでいきなり41試合出場17得点で、いずれもキャリアハイをマークした。リカルド・ロドリゲス監督が積み上げてきた独自のスタイルに、187センチの長身を誇る強靭なストライカーがぴたりとはまった。
「とりあえず、率直にすごくうれしいのがあって、いままでやってきたことの積み重ねが実ってうれしい気持ちです」
「やって来たことの積み重ねが、こういうところで結果に出てそれが一番うれしいことです。みんなでやって来たことが結果に出るのはうれしいことだと思います」
強調するのが、「積み重ね」と「みんなで」だ。まさに一体感。岩尾が言う「みんなで補い合って」という言葉と重なる。
ここ2試合で昇格を決められなかったが、「3試合目の正直」が実った。
「みんな気持ちの面は変わってないですし、負けるときは負けるし勝てないときは勝てませんから。やって来たことを信じてきたのが良かった」と一喜一憂しない心の安定感が、最終的にチームと自分の結果に結びついた。
17ゴールはJ2得点ランクで3位。残り1試合でランク1位のピーター・ウタカ(京都サンガFC)の22点を上回るのは容易ではないとしても、2位のディサロ燦シルヴァーノ(ギラヴァンツ北九州)は18で1点差だ。昇格は決まったが、最終節は優勝のかかるアビスパ福岡との直接対決。勝利と得点ランク2位浮上を手にすれば、最高のエンディングになる。
そして2021年、徳島がJ1に帰ってくる。
「積み重ねてきたものは壊さずにもっと成長して、プラスアルファの何かを出していければと思っています」