明治安田生命J2リーグは残り2試合。第40節で京都サンガFCに完勝したアビスパ福岡では、遠野大弥が2試合連続ゴールを決めた。これが目標だった二ケタ得点となる10点目だったが、ミスが生んだ一発だったとは意外。

上写真=2試合連続ゴールが目標の10得点目。遠野大弥がノッてきた(写真◎J.LEAGUE)

「パスもシュートもできる状況に」

 昇格への、優勝への2試合連続弾だ。2位のアビスパ福岡が「上位キラー」京都サンガFCを迎えたJ2第40節。エミル・サロモンソンが先制ゴールを決めたわずか2分後の65分、遠野大弥が胸のすくような左足のパワーショットを放つと、バーに当たりながらも突き刺さって、リードを一気に2点に広げた。

「(田邉)草民くんがドリブルで運ぶときに(増山)朝陽くんがすごい勢いで前に走っていったのが分かって、相手が釣られて僕のスペースが空きました。そこで止まってもらって、トラップした瞬間も右に(山岸)祐也くんがいるのを確認できたんですけど、出さずに自分で打ったことが点につながったと思います。あの状態でパスもシュートもできる状況にしてくれたチームメートに感謝しています」

 ゴールを振り返るこの一言に、多くのことが詰まっている。ボールを運ぶ田邉とそれを追い越していく増山、中に遠野、右に山岸と、少なくとも4人が関与していること。遠野が受けたときにも少なくともシュートと山岸へのパスと選択肢は2つあり、それが相手を惑わせたこと。そして、遠野自身が冷静にフィニッシュを選択できたこと。昇格へ、優勝へ向けてこのチームがどれだけ成熟してきているかを端的に示すシーンだろう。

「最初はパスも考えたのですが、自分の長所ってなんだろうというのを考えたときに、シュート意識の高さがゴールにつながったと思っています」

 最後はストライカーの本能に突き動かされたというわけだ。遠野の言葉になぞらえれば、本能をちゅうちょなく押し出すことのできる状態を作ってくれたチーム力があってこそだ。

 技術的に見ると、右足でトラップしてからすぐに左足を振り抜いたリズムが、見ている方にも快感だった。しかし意外にも、あれはミスだったのだという。

「本当はいいところに置きたかったんですけど、トラップが浮いてしまったんです。浮いた分、ディフェンスはすぐに詰めてくるので、早く打つように意識を切り替えて打ったら、いいところに行ったので良かったです」

 つまり、トン、トン、というリズミカルなトラップからの豪快なシュートは、ミスが生んだことになる。そんなミスならいくらしてもいいのかもしれない。

「バーに当たった瞬間は入ったかどうか分からなかったけど、入って素直にうれしかったです」と笑ったが、これが目標だった二ケタ得点となる今季10点目だった。でも、ここで止まらない。残り2試合ももちろんゴールを狙っていく。

「あと2試合、同じような場面は来るだろうし、まだまだ満足していないので、もっと取っていきたいです」

「自分自身もいますごく調子がいいので、点を取れればいいですけど、まずはチームがどんな形であろうと勝つことが最優先です。それに向けてハードワークすることだと思っています」

 優勝も昇格も得点も、すべて手にしてしまえばいい。