上写真=9試合ぶりのゴールで勝ち点1ともぎ取った遠野大弥。残り3試合すべてでゴールを狙う(写真◎J.LEAGUE)
「理想の形で取れた」
チームトップの9ゴール目は、力強いドリブルが生んだ。
12月6日のJ2第39節ツエーゲン金沢戦、0-2の劣勢から84分に田邉草民が1点を返して追い上げムードは高まる。それに背中を押されるような遠野大弥のロングドリブルだった。
自陣深くで相手の攻撃を食い止めた前寛之から、エミル・サロモンソン、重廣卓也と渡ったボールが遠野に回ってきた。自陣から一心不乱に持ち出してぐいぐいと敵陣を突き進み、左の田邉に預ける。そのままペナルティーエリアに入ったところでパスが返ってきた。左足でしっかりと力を伝えたシュートがGKの手を弾き、ゴールに転がり込んだのが87分だった。土壇場で追いつく貴重な同点ゴール。これで勝ち点1を手にして2位を堅持した。
「(田邉)草民くんが左に開いたのが見えて、一度預けて潜り込んでもらおうと。理想の形で取れたのでうれしく思います」
試合後にそう声を弾ませたが、改めて振り返って、9試合ぶりに決めたゴールへの思いを明かした。
「ヴェルディ戦で何回かチャンスがあったのに、ポストに当たったりサイドネットに外れたりしていって決めきれなかった悔しい思いがあって、金沢戦で取れて、9試合ぶりでどういう感情か分からなかったんですけど、すぐにすごく泣きそうになって、うれしくて」
11月1日の第30節ジュビロ磐田戦で決めてから沈黙し、特に25日の第36節東京ヴェルディ戦での逸機に悔いを残していた。だからゴールのあとに、高ぶる感情に任せて両手で顔を覆って天を見上げていたのか…。
「負けなかったことを評価したいですし、ああいう点を取るサッカーを前半からどんどん見せていけばと思いました。長い間、決められていなかったので、なにか吹っ切れたかなと思います」
チームに勢いを与えたことはもちろん、苦しい思いを解き放ち、自分自身を進化させた一発だったのだ。
「練習でもやっぱりシュートの意識を持って取り組んでいますし、その意識が試合につながると思うので、次の試合でも自分が点を取って勝つということは変わらないですし、1点だけじゃなく複数得点で勝ちたいです」
リミッターを切った遠野大弥は危険だ。これから戦う京都サンガ、愛媛FC、そして徳島ヴォルティスは、苦労するだろう。