明治安田生命J2リーグ第32節で東京ヴェルディは首位の徳島ヴォルティスを迎えた。一時は同点となるゴールを挙げたのが、藤田譲瑠チマだ。相手のミスを突いた見事なカウンターからの一発はチームに勢いをもたらした。

上写真=藤田は今季、32試合中31試合に出場する主力。昨季デビューしたばかりとは思えない(写真◎J.LEAGUE)

■2020年11月7日 J2リーグ第32節(@味スタ:観衆5,181人)
東京V 1-2 徳島
得点者:(東)藤田譲瑠チマ
    (徳)清武功暉、岩尾憲

「外して当たり前だと思って」

 43分の同点ゴールは鮮やかだった。

 徳島ヴォルティスが組み立ててくるところで、藤田譲瑠チマは縦パスを狙っていた。ぐっと一歩出て奪い取ると、すかさず前にいた端戸仁に預けて、そのまま右側を駆け抜けていく。端戸が持ち出してからリターンパスをもらうと、ワントラップからペナルティーエリアに入る直前で右足をコンパクトに振ってゴール左に流し込んだ。昨年までのチームメートだったGK上福元直人から奪った、鮮やかでスピーディーな一撃だった。

「特に意識していないですけど、先輩から奪えたのはうれしいです」

 相手が上福元だということに特別な感慨はないようだが、試合後のオンライン会見では上福元が話しているときに横に立ってガッツポーズを作って見せて、上福元に突っ込まれていた。

「相手の緩くなったパスでしたが、そういうシーンを狙っていたのでうまく取れて、仁くんがいいところにいて一回預けてスプリントして前に行って、うまく流し込めたかなと思います」としてやったり。「自分ではシュートは得意な方ではないし、練習からも前節の金沢戦でも外していて、外して当たり前だと思って逆に力が抜けたのが良かったですね」と笑った。

 ただ、フィニッシュに至る場面は冷静そのもの。「(足の振りを)コンパクトにしたというよりは、ディフェンダーが寄せてきていたので、スライディングしてきてその足に当たるのは最悪だと思って、スライディングが来る前にと意識していたんです」と相手の動きが完全に見えていた。

 いい具合に力が抜けつつ、相手も見えていたフィニッシュワーク。これがプロ2点目だった。1点目は11月1日の第30節アルビレックス新潟戦。こぼれ球を押し込んでコロコロと入った形だったのだが、今回は思い切りよく突き刺したので「やっとゴールネットを揺らせましたし、正真正銘のゴールになりました。誰も文句言えないゴールですよね」とニヤリ。どんな形でもゴールはゴールだが、やはり気持ちの良さは今回のほうが上だったのかもしれない。

 最終的には86分にPKを決められて1-2で敗れたが、東京Vの永井秀樹監督も徳島のリカルド・ロドリゲス監督も話していたように、どちらが勝ってもおかしくないような試合展開だったのは事実。実際にプレーしていた藤田の感触としても、悪いことばかりではない。

「前がプレスを掛けてくれたあとのスペースに2列目が遅れて出ていってしまって、自分たちが空けてしまったスペースに相手のフォワードが落ちてきてワンタッチで外されてしまいました。そこをみんなで話し合って、だったらマンツーマンで行こうと話して良くなったと思います」

「相手にボールを持たれる時間が多い中で、前半はうまくいかなかったところもありますけど、後半にアグレッシブにいこうと話して、奪ってからチャンスが増えていったので、後半は悪くなかったと思います」

 そんな手応えも感じた首位とのバトル。6試合も勝利から遠ざかってはいるが、上昇の兆しが見えた90分だったと言えるだろう。

写真◎J.LEAGUE