秋も深まり、有力な大学4年生たちの進路はほとんど決まってきた。すでにスカウトたちの目は『次の世代』にも向けられている。今回紹介するのは、注目すべき3年生の一人。予測を持ち味とする国士舘大のセンターバック、谷口栄斗(たにぐち・ひろと)だ。

上写真=必ずプロになると誓う国士舘大のCB谷口栄斗(写真提供◎関東大学サッカー連盟/飯嶋玲子)

東京V・永井秀樹監督との出会い

 威風堂々。国士舘大の最終ラインを引き締める3年生センターバックの立ち振る舞いである。鋭い出足でインターセプトし、余裕を持ってピタリと前線に縦パスをつける。谷口栄斗のプレーは、自信に満ちている。

「センターバックは落ち着いて、堂々とした姿を見せるのも大事です」

 安定感のある守備という表現が、しっくりくる。お手本の一人はFC東京の森重真人。堂々とした立ち姿は、参考にしているという。肩の力を抜いて、巧みに駆け引きして守るスタイルにも目がいくようだ。

 ただ、育ちは東京ヴェルディ。ジュニア年代から指導を受けており、ご多分に漏れず足元の技術はしっかりしている。守備のイロハも叩き込まれた。現在、東京Vを率いる永井秀樹監督との出会いは大きかった。

「サッカーに対する考え方が、すべて変わりました。これまで教わったことがないようなことを教わりました。サッカーがより理解できるようになったと思います。ディフェンスにとって大事なのは、予測と判断だと言われました」

 国士舘大に進学後も恩師の言葉をずっと胸に留めており、いままさにプレーで体現している。「僕の持ち味は予測です」と胸を張る。昨年は関東大学2部リーグで戦い、今季から1部に復帰。多くのJリーガーを輩出するハイレベルの高い舞台でも、タフでクレバーな守備は目を見張るばかりだ。がっちりとした体格ではあるが、センターバックとしては181センチ、77キロと、大柄ではない。

「体は小さいほうですし、足もそんなに速くないです。だからこそ、予測、判断が重要になってくると思っています」

 目指すべき場所がブレることはない。「必ずプロになります」。同世代からも刺激を受けている。東京Vユースで一緒にプレーしていた藤本寛也は、今年8月にポルトガルのジウ・ビセンテへ期限付き移籍し、活躍の場を海外に移した。年代別代表のチームメイトだった橋岡大樹(浦和レッズ)はJ1でコンスタントに試合に出場している。焦る気持ちがないわけではない。それでも、大学でひと回り大きく成長することを誓う。

「カテゴリーは違いますが、やっているサッカーは変わりません。この先、大学での4年間が無駄ではなかったことを証明したいです」

 目標は再びヴェルディのユニフォームに袖を通すこと。幼い頃から育ってきたクラブへの思いは特別である。J2リーグの試合も欠かせずチェックし、ずっと気にかけている。

「まずはヴェルディに戻ることを一番に考えています」

 サッカー観を変えてくれた恩師の下で再びプレーするために、大学で過ごす日々を1日足りとも無駄にするつもりはない。

取材◎杉園昌之 写真提供◎関東大学サッカー連盟/飯嶋玲子