明治安田生命J2リーグ第29節で5位のアルビレックス新潟を迎えた2位の徳島ヴォルティス。序盤から数多くのビッグチャンスを作りながらゴールに至らず0-0に終わった。2度に渡って最もゴールに近づいた河田篤秀が語った「その瞬間」。

上写真=河田篤秀が古巣相手に2度のビッグチャンスで迫ったが…(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月25日 J2リーグ第29節(@鳴門大塚:観衆5,171人)
徳島 0-0 新潟

あのチャンスは決めたかった

 徳島ヴォルティスには勝利を引き寄せられるチャンスが何度もあった。そのうち、最も決定的なものの二つが、古巣相手に牙をむいた河田篤秀によるものだった。

 75分の波状攻撃。ジエゴの左からのクロスがニアサイトにピンポイントで飛んでくる。体ごと飛び込んでいったのが、69分に代わって入ったばかりの河田だ。舞行龍ジェームズにマークにつかれながらのダイビングヘッド。ボールのコースを絶妙に変えた強さと角度はほぼパーフェクトだったが、ボールは無情にもバーを直撃した。

 89分、同じように左からの渡井理己のクロスに、今度は舞行龍の後ろ、堀米悠斗の前に入り込んだ。体をうまく寝かせるようにして飛んで、右足を伸ばしてボールを押し出すようにフィニッシュ。しかし、動かず我慢していたGK小島亨介に正面で止められた。

「ヘディングのシーンはゴールに飛ばしたので精一杯でしたけど、2つ目のチャンスは自分がキーパーの方向に蹴ってしまっているので、ぎりぎり足が届いた状態ではありましたけど、もうちょっと工夫はできたかなと思います」

 それが河田自身の分析だった。89分のチャンスで、例えば足首の角度を変えたり、ボールを当てる面を少しずらしたり、足の振り方を変えたりすれば、正面には飛ばなかったかもしれない、という悔いが残った。

 9月19日の第20節でアウェーで対戦したときも後半途中から登場。1本目の絶好機を決められなかったが、その次のチャンスはものにして1-0の勝利に導いた。そのときとそっくりのシチュエーションになったが、今回は実らなかった。

「動き出しもできたしボールにも触れたので、簡単ではなかったですけど、あのチャンスは決めたかったと思います」

 こうして、今季2度目の古巣戦は0-0のまま終了のホイッスルを聞くことになった。

 リカルド・ロドリゲス監督も渡井も試合後に、ビルドアップの面で物足りなさを口にした。ピッチの外と中の両方から試合に関わった河田には、「外から見たときの印象では、新潟がボールホルダーに強く来ると思っていました。全体でサイドではめに行こうという守備だと外しやすいと思うけど、新潟はファーストディフェンダーがボールに来たので、そこでパスがずれたりミスが出たというのはあると思います」と見えていた。それだけ、新潟も分析してきていたということだ。

「勝ちたかったのは当然ですけど、新潟のプレスでいつもより失うシーンも多かったと思います。僕以外のところでは決定的なチャンスはなかったので、勝ち点1を取れたことはいいけれど、いまの状況を考えて勝たなければいけなかったと思います」

 首位を行くアビスパ福岡がジェフユナイテッド千葉に勝ったために勝ち点差は広げられたが、追いかけてくる3位のV・ファーレン長崎も引き分けて勝ち点5差、4位のギラヴァンツ北九州は松本山雅FCに痛恨の敗戦を喫したので同9差になった。だから、この勝ち点1は決して小さくはない。

 垣田裕暉の10ゴールに次いでチームで2番目に多い7得点を挙げている河田。残りはもう13試合のみ。そこで河田がゴールを陥れることができるかによって、徳島の未来は変わってくるだろう。

写真◎J.LEAGUE