明治安田生命J2リーグの第28節でFC町田ゼルビアは首位のアビスパ福岡をホームに迎えた。相手は12連勝中だが、こちらも3試合負けなし。その意地を見せて福岡の攻撃を封じたが、安藤瑞季はビッグチャンスを逃してつい褒め言葉が。

上写真=安藤瑞季は最前線で激しくバトルしながらボールを収め、ゴールを狙っていった(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月21日 J2リーグ第28節(@Gスタ:観衆1,008人)
町田 0-0 福岡

「パワーシュートを打つふりをして」

 あの瞬間を振り返ると、キーパーのファインセーブを褒める言葉が口からこぼれた。

 後半が始まってすぐの47分。FC町田ゼルビアは高江麗央が中盤左寄りで受けてから相手の間をきれいなスルーパスで割って、縦に送り込んだ。その先には安藤瑞季。右足で縦に持ち出して左足でフィニッシュ! しかしGK村上昌謙が鋭く反応して右手一本ではじき出した。

「僕の中では左に持ち出してパワーシュートを打つふりをしてループを狙ったんです。キーパーも前に重心をかけてきていたのですが、弾道が低くなってキーパーもいい反応をしたと思います。シュートに持っていく流れもシュート自体も悪いイメージではなかったんですけど、もう少し弾道が高かったらなと思います。本当にキーパーがいい反応をしました」

 2度もキーパーを称えるぐらいだったから、よほど悔しかったのだろう。

 相手は12連勝中で首位のアビスパ福岡。ここで叩けば一気に自信がつく。

「相手が12連勝しているというわけではなく、いつも勢いあるゲームをしていきたいと思っています。ゴールを奪ってやろうと思って自分たちの時間多く作れましたし、気持ちは入っていました」

 その言葉通り、前半はペースを握った。競り合いに負けないフィジカルは真骨頂。相手の嫌な場所に立ち続けて、福岡の守備陣を悩ませた。

「足元に食いついてきてくれるので背後を取って抜け出せました。でも、ゴールを取り切れないのは力不足ですね。守備のレベルの高い人たちばかりでした」

 47分の決定機はまさにその象徴で、相手が捕まえにくいポジションを取って、裏のスペースにすり抜けるようにして出ていく動きが光った。

 そこでゴールが奪えなかったことと、もう一つの反省は「距離」のこと。

「平戸くんとの距離がちょっと遠いと感じていました。もっと平戸くんとの関係を多く持てたらチャンスが増えるだろうと話していました」

 最前線に安藤が入り、その周辺で平戸太貴が自由に動くという攻撃ユニットは町田の大きな武器。ただこの日は、サイドハーフが高い位置を取っていたために、ボランチ2人と平戸でボールを回していく狙いがあったのだという。そのために平戸はボランチとの距離を近づけるようにプレーしたために、最前線の安藤からはいつもよりはやや遠めに立っていた。

 それでも首位の福岡を押し込む時間も長く、0-0ではあったものの、ランコ・ポポヴィッチ監督も「ファンタスティックなゲームだった」と満足げだった。

 今季の安藤は4ゴールだが、すでに5試合、ゴールから遠ざかっている。さらに貪欲に狙って、危険なストライカーになるべき存在だ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE