10月21日、明治安田生命J2リーグ第28節が開催され、味の素スタジアムでは東京ヴェルディとジュビロ磐田が対戦した。互いに好機をつかみながらもそれぞれのGKが最後の砦として君臨し、好守を連発。濃密は90分はスコアレスドローに終わった。

上写真=ボールを競り合う東京Vの佐藤優平と磐田の遠藤保仁(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月21日 J2リーグ第28節(観衆3,160人/@味の素)
東京V 0-0 磐田

・東京Vメンバー◎GK柴崎貴広、DFクレビーニョ、近藤直也、平智広、福村貴幸(46分:山本理仁)、MF藤田譲瑠チマ、森田晃樹(90+1分:石浦大雅)、佐藤優平、FW小池純輝(78分:新井瑞希)、大久保嘉人(59分:井上潮音)、山下諒也(90+1分:澤井直人)

・磐田メンバー◎GK八田直樹、DF小川大貴、舩木翔、今野泰幸(69分:大井健太郎)、山本義道、MF山田大記、遠藤保仁(69分:上原力也)、山本康裕、大森晃太郎(46分:松本昌也)、FWルキアン(78分:小川航基)、三木直土(46分:中野誠也)

東京Vの柴崎、磐田の八田が最後の砦になる

 ホームの東京Vが磐田が4バックを採用したことに面食らった。「3バックを想定して練習してきて序盤は攻撃の形も含めて対応できなかった」とアンカーの藤田が話したが通り、人を捕まえきれず、立ち上がりは磐田の攻撃を受けることになった。遠藤とのワンツーで小川大に自陣深くまで進入を許し、遠藤の浮き球パスからルキアンにシュートを打たれた。中盤を自由に動く遠藤を捕まえきれず、相手に前がかりなるきっかけを与えてしまう。

 磐田側にしてみれば、まさに、してやったりだった。4バックを採用したのは3トップ気味で来る相手を想定してのこと。中盤からしっかり人を見張る一方で攻撃では、監視を逃れてアグレッシブな姿勢を打ち出すことに成功した。

 しかし、いきなり訪れた好機を磐田は生かせずに終わる。20分を過ぎたあたりから、ゲームは次第に東京Vペースになっていった。「誰が誰を見るのか、話し合った」と藤田。試合の中で相手を見て修正し、適応する力を永井ヴェルディは磨いてきた。それを実践したのだった。

 ただ、東京Vも前半はその藤田が序盤に放ったミドルシュートや43分の大久保の無回転ミドルなど惜しいシーンを作りながら、磐田GK八田にセーブされて、ゴールを奪えずに前半を終える。

 0ー0で折り返した後半も開始直後は東京Vがペースを握り、60分には山下がボックス内から決定的なシュートを放った。だが、これまた八田に止められてしまう。

 後半立ち上がりのピンチを防いだ磐田は、最終ラインを支えていた磐田の今野が負傷交代し、巧みなパスで攻撃を司っていた遠藤が交代した70分以降、ゲームそのものがややオープン展開になったこともあって、再び畳みかける時間を迎える。山田がパスを通し、舩木のクロスを上げ、ルキアンがヘディングシュートを放った。けれども、いずれも得点にはつながらない。

 まさに攻め合い、守り合い。89分には磐田の左サイドバック舩木の絶妙なクロスを東京VのGK柴崎が迷わず前に出てキャッチ。さらにアディショナルタイムにも、東京Vの守護神は上原の至近距離からシュートを鋭い反応で防いでみせた。東京Vも磐田も最後までペースを緩めずにプレーした。実に濃密な90分。ただ、ネットだけが一度も揺れなかった。

 激しい試合を振り返り、「90分間、選手がアグレッシブにプレーしてくれた、いいゲームだったと思います」と磐田の鈴木政一監督は評価し、「勝ち点3を取れなかったことは悔しいですが、よくやってくれた」と東京Vの永井秀樹監督は選手をねぎらった。

 上位との差を詰めるために互いに負けられない試合で、手にしたのは勝ち点1。当然、悔しさはあるはずだが、同時にポジティブな要素を多分に感じたアグレッシブなドローだったのではないだろうか。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE