J2第22節で首位・ギラヴァンツ北九州を破った一戦で攻守に存在感を示したのが、東京ヴェルディの背番号20、MFの井上潮音だ。勝利に大きく貢献したが、試合後取材に応じた本人は、もっとできると満足していなかった。

上写真=北九州戦で攻守に存在感を示した東京Vの井上潮音(写真◎J.LEAGUE)

■2020年9月27日 J2リーグ第22節(観衆1,301人/@味の素フ)
東京V 1-0 北九州
得点:(東)小池純輝

90分、自分たちのサッカーはできなかった

 ボールを握ってゲームを支配できたわけではなかった。だからベストゲームとは言えない。それでも、積極果敢なプレスで首位チームの持ち味を消し、好機を何度も生み出した。ギラヴァンツ北九州戦は、ボール保持だけではない永井ヴェルディの特長が表れた試合だった。

「90分間、自分たちのサッカーはできなかったんですけど、耐えるべき時間帯で最終ラインを中心に耐えられたことが勝利につながったと思います」

 フロントラインの中央、やや下がり目のポジションを務めつつ、攻守に働いた井上潮音も勝利に貢献した一人だ。2CB+最終ラインに落ちるボランチの3人で後方からビルドアップする北九州に対し、中盤に残るボランチを見張りつつ、2CBに対してもプレッシャーをかけた。マイボールになった際にはチャンスの創出に注力。前半7分に佐藤優平のシュートを導いたラストパスなどは、まさに井上の攻撃センスが表れていたが、この日は守備の仕事をしっかりやり切った印象が強い。

「僕のところでアンカーの選手を消すところと、タイミングを見て前の3枚で相手の後ろの3枚をハメにいく判断には難しところもありましたけど、後ろの声を聞きつつ、チームが一つになって守れたと思います」

 もとより攻撃面の才能は誰もが認めるところ。それに加えて守備面の能力を伸ばせば、アタッカーとしてさらに高いレベルに到達する。この日は攻守両面で十分な働きを示したように映るが、それでも本人は満足していなかった。

「守備で相手のアンカーを消すというところで、多少の仕事量はあったと思いますが、その後、ボールを奪って出ていくところや最後の場面でゴール前に顔を出していくところは、まだまだ少ないと思います。そこはもう少し増やしていきたい」

 どん欲な姿勢は、現在の東京Vの選手たちの共通するものだが、井上のそれはひと際強いと感じさせる。だからこそ、監督の信頼は厚く、重要なゲームで先発に名を連ねているのだろう。本人が目指す場所はもっと高みだ。

「前半戦に戦った21チームの中で一番強かった」と感じたという北九州戦に勝利し、後半戦は幸先の良いスタートを切れた。ここからどこまで上昇していけるか。2位チームとの差を詰めていけるか。いずれにせよ、チームが浮上していくには攻撃能力を磨き、守備能力を日進月歩で伸ばす井上潮音の力が不可欠だろう。