フアンマ・デルガドが9月に入って調子を上げている。2日の千葉戦で起死回生の同点ゴールを挙げ、前節の町田戦、そしてこの日の大宮戦は決勝点をスコア。出場した4試合で3得点。期待通りの活躍でチームを上昇気流に乗せている。

上写真=65分にゴールを挙げたフアンマ。仲間の祝福を受ける(写真◎Getty Images)

■2020年9月16日 J2リーグ第9節(観衆1,880人/@NACK5)
大宮 0ー1 福岡
得点:(福)フアンマ

自分にとっては特別な試合だった

 勝負を決めるゴールになった。まさしく値千金の一発だ。65分、前寛之が放った左からのクロスに対してドンピシャのタイミングで飛び込み、フアンマは右足ボレーでネットを揺らした。

「自分自身にとって特別なスタジアムで、特別な相手に、得点が取れたことはうれしい。ただ、それ以上にチームの勝利に貢献できたことが自分にとっては一番うれしかった」

 昨季は大宮でプレーしていた。13ゴールを挙げたが、今季から福岡に加入。フアンマにとってNACK5スタジアム大宮は勝手知ったる場所ということになる。その上、敵将の高木琢也監督は長崎時代と昨季の大宮で3シーズンともに戦った指揮官だ。

「自分にとって特別な試合だった。だから試合に出たいという気持ちがすごくありました。こういう過密日程ですが、回復して今日の試合に臨めたと思います。チームもうまく回復し、自分たちがやりたいサッカーができました。それが勝利の要因だと思います」

 前節の町田戦(13日)も先発してゴールを決めていた。78分に退いてはいたが、この大宮戦は中2日だ。疲労がないと言ったらウソになる。それでも「特別な試合」に先発し、2戦連続ゴールを挙げた。しかもいずれも決勝点。この日は古巣相手にあらためて自身の価値を証明することになった。

「フアンマに関しては疲労もあったと思いますが、本人とコミュニケーションをとりながら(起用を決めた)。やはり今日のゲームに懸ける思いというのは、彼の中では相当なものだったと思います。私も選手時代に移籍したことがあり、そこでのパワーというか、持っている力以上のものが出る可能性がある。それを今日、彼は出しました。良かったと思います。そこに期待もしていました」

 連戦の中で起用を決断した長谷部茂利監督の期待に、フアンマは見事に応えた。

 ゴールの場面以外にも、フアンマはポストワークで攻撃を形づくり、何度もハイボールを競り合った。チームもフアンマがいるからこそできる攻め筋を理解し、その持ち味を存分に出そうとしていた。今季ここまで15試合で4ゴールと昨季の13得点のペースには及ばないが、9月に入ってからは4戦3発。最近はチームの中でその能力を発揮していると映る。

「ここ最近は数少ないチャンスで決め切れています。それが連勝につながっている。決定的なチャンスは作れていますが、その数はまだ少ないので、チャンスの数を増やしたい。それがチームの課題。そうしなければ勝ち続けることは難しいと思います」

 本人はチームファーストの姿勢を強調し、今後に向けた課題も口にした。ただ、「ゴールの手応え」をつかんでいるのも事実だろう。フアンマが決めた試合は今季負け知らず(2勝2分け)。その活躍が、そのまま勝ち点の獲得につながっている。

 5位に浮上したチームで確かな存在感を示すナンバー9。2017年に長崎でJ1昇格を貢献しているが、あのときの凄みが今、フアンマに宿りつつある。