上写真=ボランチとして攻守にカギを握る。ピッチ全体を見渡す目はさすが(写真◎大宮アルディージャ)
テンポを変える思い切ったプレーを
いまに始まったわけではないし、やってこなかったわけでもない。そしておそらく、世界中のすべてのサッカープレーヤーが同じ悩みを抱えているだろうが、だからこそ改めて、何度でも大山啓輔が求め続けるのが「リラクゼーション」なのだ。
「ビルドアップや、チャンスを演出する部分までは、ある程度の決まりごとやコンビネーションでどうにでもなるんですけど、最後のアタッキングサードに入ったら個人のクオリティーが重要です。最後のクロスをしっかり合わせるとかシュートを枠に飛ばすとか、個人レベルのところでは、自分を含めてゴール前だからこそ焦らず冷静に落ち着いてリラックスしないといけないんです。うちにはそのクオリティーを出せる選手は揃っているから、冷静に発揮できるかがポイントだと思います」
9月9日のJ2第18節FC琉球戦で久々に先発出場したものの、0-5の大敗を喫する屈辱を味わった。中3日で迎えた第19節のモンテディオ山形戦は開始5分に先制する立ち上がりだったが54分に追いつかれる展開に。大山自身は75分からピッチに出て勝利への1ゴールを狙ったが、1-1のドローに終わった。
大敗の次の試合で幸先よく先制したところまでは良かったのだが、それ以降の試合運びには悔いも残る。高木琢也監督も「押し込まれたのが現状」と分析しており、ベンチで、あるいはピッチで得た大山の感触も同じようなものだった。
「早い段階で得点する場合は、そこまで感覚的には守備的になっているつもりはないんです。イメージとしては、守備を固めるよりも、リードしたことによって自分たちのビルドアップからショートカウンターを食らってしまうのが気になって攻めが淡白になることが多いのかなと思います。それで結果的に相手にボールが渡ってしまって、後ろに重くなる、というのが外から見て思ったことでした。先制したから守りきろうという感じではないので、思い切ってもう一回、ボールを握っていくことができれば攻撃する時間が長くなって、押し込まれることはなくなるんじゃないかな。改善方法を自分なりに考えると、そこになりますね。もちろん、ビルドアップをする中では奪われてしまうのもあることなので、そこは恐れずにやることです」
ピッチで起きている現象をしっかりと言葉にできるのは、全体が見えている大山ならでは。守り倒すためではなく、攻めに出られなくなる慎重さが手に取るように理解できる。だから大山自身が出番を得たときには「できるだけ前に、途中から入ったフレッシュな選手を使って運べれば」と意識して、シンプルに左右にボールを配っていった。
次はアビスパ福岡戦。展開によっては相手は5バックになって守備を固めてくる可能性もある。そんなときはどうするのか。大山の言葉がイメージをクリアにする。
「固められたらある程度の高さまでは運べます。ですから、そこからのコンビネーションや中盤でのミドルシュート、どこかでテンポを変える思い切ったプレーが必要になると思います。リスクと人数をかけた攻撃が必要になるのではないか」
テンポを変えるアクションを。出場することがあれば、大山自身がその役割を担って勝利に導くことだろう。