明治安田生命J2リーグで東京ヴェルディは6勝6分け4敗、勝ち点24で暫定7位につけている。独自のスタイルでピッチに魅力的なフットボールを描く緑のクラブ。永井秀樹監督は、その次のステップも視野に入れている。

上写真=永井監督は磐田戦では勝ち点3を手にできなかったことを猛烈に悔しがった(写真◎J.LEAGUE)

自分たちで作り出すコントラ

 9月2日、明治安田生命J2リーグ第16節のジュビロ磐田とのアウェーゲームは2-2のドローだった。小池純輝が先制したあとに自分たちのミスと相手の個人技で逆転を許しながら、CKのチャンスから近藤直也が決めてなんとか勝ち点1をもぎ取った。だが、永井秀樹監督は満足できていない。

「もちろんスコア的には悔しい結果に終わりましたが、内容に関しては本当に良かったと思うし、昨年までJ1にいた強敵をアウェーの地で、特に後半はほとんど相手コートに押しこんでゲームを進めることができたのは素晴らしかった。それは彼らの成果だし、いまのチームの成長過程は素晴らしいものがあると選手にも伝えました。でも、私はそこから先を見ていますし、ポテンシャルを考えると崩し切る力はついていると思います。あの内容で勝ち切るというところまで高めていきたいんです」

 磐田は守備時に5-4-1の布陣を組んで、スペースを埋める形で安定を担保する戦い方だった。これに限らずJ2のどのチームも、東京Vのスタイルを無力化するためにさまざまに策を巡らせてくる。だが実は、東京ヴェルディにとってはこれが「大好物」。守り抜こうとする相手を、自分たちの技術とコンビネーションとスピードとパワーを駆使して崩し、そしてゴールを奪うことが、最大の狙いだからだ。

 永井監督は敵陣に押し込んであの手この手で守備を割ろうとする選手たちのアクションを称えたのだが、だからこそ、最後のひと突きが足りなかったことを悔やむのだった。

 このスタイルを貫く意志は変えないものの、その「運用」については永井監督も新しいステップを視野に入れている。

「常にヴェルディスタイルでノーマルな形で崩して点がほしいですし、セットプレーからも、私たちの言うコントラ、つまりカウンターからも点がほしいんです。すべてのバージョンから点が取れるように準備したいと思っています」

 磐田戦で言えば1点目がノーマルな形だったし、2点目はセットプレーだった。では、第3の「コントラ」についてはどう考えているのだろうか。

「相手を引き出して突く、というのは、実はいま自分の頭の中では一番やりたいことなんです。相手を長い距離で縦に引き込むというのがまさに考えているところで、そうすればなお効率よく点を取れると感じているんです。まさに自分たち主導で、相手を縦に長く引き出してギャップを突く、つまり『自分たちで作り出すコントラ』ですね。それには、より俯瞰で見ながらやれるようになるといいと思います」

 これを自在に操ることができたとき、永井監督が目指す楽しいフットボールが「完全体」になるのかもしれない。